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第295回 IL BALLETTO DI BRONZO "YS" |
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IL BALLETTO DI BRONZO - "YS" |
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RARE度:★★★★★★★ |
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Member : |
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Vito Manzari(b), Gianchi Stringa(ds), Lino Ajello(g), |
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Side (B) |
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徹頭徹尾60年代ハード・ロック調のデビュー・アルバムから一転、 彼らはとんでもない作品を世に送り出します。 『YS』と書いて、『イプシロン・エッセ』と読むこの2ndアルバムは、 一見フツウのジャケットからは想像できない世界が広がります。 本当に2年前の1stとメンバーおなじかよ?と聞きたくなる位、別の音に なっています。 人から『どんな感じ?』と聞かれれば、大方のアルバムなら、それなりに 説明ができるものなのですが、このアルバムはそれを許さず、『好き?』 という質問にすら明確な返事ができず、『なんか凄い』で片付けてきた 一枚です。今回は敢えてその『なんか凄い』感じのご紹介となります。 耽美なイントロ、邪悪なハモンド、淫靡なスキャットと、そんな スキャットとは対照的に伸びやかなヴォーカル、超複雑なリズム・セク ションにヘヴィーなギター、そして難解な曲構成、と説明の言葉を並べれ ば並べるほど、混乱しそうな、要するに一筋縄ではいかない作品で、 個々には「ピアノがかっこいい」とか「ドラムスが超絶」とも言われ、 そういう意味ではチェルヴェッロの『メロス(Melos)』的です。 チェルヴェッロ(CERVELLO)の他にも、オザンナ(OSANNA)やセミラミス (SEMIRAMIS)に代表される、クセの強いイタリアン・プログレは、一度 聴いただけで好きになる事は少ないと思われ、聴きこんでいくうちに、 じわじわとその独特感に近づきハマっていくか、逆に全く受け付ける事 すらできないかのどちらかに分かれていくと言われていますが、この アルバムはその典型で、複雑極まりない深い深い一枚ですね。 何か奥の闇の彼方に深いものがありそうな気がするのに、見つけるまでの 道のりが遠くて、イヤになって降りてしまうのか、そこを我慢して挑戦 し続けるのか、いつまでたっても決めかねている、そんな感じなのです。 30回や40回、いやそれ以上に聴いたって(大袈裟ですか?)理解できない といっても過言ではない内容は、安易なプログレ・ファンは全く寄せ付け ない孤高の名盤と言ってしまってもいいのではないでしょうか。 ひとつ、ハッキリ言えるのは、前衛的なお芝居や映画を観終わった時に 感じる、普段使う事のない脳の部分を動かしてみたかのような、不思議な迷宮的快感が心地よく余韻として残ります。だからこそ、もう一度、理解してみようと挑戦してしまうのかもしれません。 誰かと一緒の時に、これを聴くのには躊躇がありますが、一人で留守番 なんかしていると、無性に聴きいてみたくなる瞬間があります。 できれば、シーンとした真夜中の静寂の中、近所迷惑にならないように ヘッド・フォンで聴くのがいいですね。(意外と小心モノです。) その時、身体からは、きっとアルファ波ではない何か不思議な振動が 出ているに違ありません。 普段とは違う琴線に触れてくる感触を楽しめる一枚だと思います。 (2009.04.30) |