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第332回 BROSELMACHINE "Same Title"

BROSELMACHINE - "Same Title"
1971 GERMAN-PILZ 20 21100-2
(Progressive Rock)

RARE:★★★★

Member :

Jenni Schucker(vo,flute), Willi Rismer(vo,g),Lutz Rimger(b), Mike Hellbach(conga,tablas,spoon,mellotron),
Peter Burch(vo,g,sitar,flute)


Side (A)
1. Gedanken
2. Lassie
3. Gitarrenstuck
4. The Old Man's Song


Side (B)
1. Schmetterling
2. Nossa Bova


ヘルダーリン(HOELDERLIN)の1st"夢"イムヂチ(EMDITI)の2nd "Saat"と並び称される、ジャーマン・フィメール3白昼夢の一角を占めるアルバムです。

ヘルダーリン程、深遠で哲学的な怖さや難しさはないですが、イムヂチの危険な香りは十分に持ち合わせています。立ち位置としては、『フォーク・ロック』である事を崩さず、それでいて、クラウトでプログレッシヴで、サイケの要素も多分に持ち合わせているので、 恐らく、一度聴いた程度ではその良さはわかりにくいのではないかと思います。それでいて、ボディー・ブローのように確実に利いて来るので中毒性を誘います。

針を落とすと、A面出だしのギターがとりあえず妖しく、例えて言うなら、霧が立ち込める山奥の更にその奥で鳴っているような印象です。冒頭の男性ヴォーカルがサウンドに妙にマッチしているのですが、 そのバックで物憂げなコーラスを歌い上げるフィメールがとてつもなく妖しげなのです。

そして、続くA-2で繰り出されるデュオのハーモニーが絶妙です。

特に珍しい展開をするわけでもないのに、ピンとした緊張感が保たれ、ボリュームを上げて、女性ヴォーカルに注意を向けると、また違う世界が見えてきそうです。

どんどんクラウト・サイケの様相を帯びてくる展開は、そんな経験はないにせよ、まるで『お花畑に引きずり込まれて抜け出せなくなる』かのような、不思議な危うさが漂います。

ウッデン・ホース(WOODEN HORSE)のように健全に美しい正統派ブリティッシュ・フォークではなく、フレッシュ・マゴッツ(Fresh Maggots)の二人が見ていたのと同じ世界なのかな、などと 想像は膨らむ一方です。

ドラッグと煙と美しい精神世界…。

聴けば聴くほどに目の下に汗を書いて眠けを誘う、摩訶不思議なサウンドなのに、B面にきてオリエンタルな香りが漂ってくると、今度は覚醒してきます。これを白昼夢と言うのでしょうか。

気持ちよく流れるメロディーに身を任せてみてください。

そこに、オヤ?これは、どこぞで聴いたフレーズ!!

そうヤードバーズのホワイト・サマーのシタール・ヴァージョンです。バッキング・コーラスでフィメールが入ります。更に後半にはベースもドカドカ入って気分を高揚させられたところに 今度はメロトロン。もう、火攻め、水攻めです。

こうして最後に取っておいた曲が、また珠玉の美しさ!

政治も経済も先の読めない不安な気分になりがちなこの夏、『癒し系』なんて甘ったるいモノではありませんが、一瞬の現実逃避にはピッタリの一枚ではないでしょうか。

そしてこのアルバムを一枚聴き終えた後には、誰しもきっと元気を取り戻しているハズです。

(2012.6.30)