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第191回 EMDITI "Saat"

EMDITI - "Saat
1972 GERMANY PILZ 20 29077-8
(Progressive Rock)

RARE:★★★★

Member :

Maik Hirschfeldt(g,flute,key), Dolly Holmes(vo,key)


Side (A)
1. Walkin' In The Park
2. Traume
3. Touch The Sun


Side (B)
1. Love Time Rain
2. Saat
3. Die Reise


ジャーマン・ロックというととかく難解なヘヴィー・ロックばかりかと思いがちですが、ここで紹介する作品はそんなドイツの中でも異色の作品 です。

夢うつつという感じに満ち溢れたジャケットからして、ファンタジックな展開を予想してしまいますが、実際にはファンタジックというよりも 白昼夢のようなもっともっと清らかで危なっかしい儚い世界が待っています。

外ジャケだけの印象でいて、内ジャケを開いたときののけぞったのに音聴いてまた更にのけぞってしまうという、知らずに買うととんでもない 目にあうアルバムでもあります。イタリアのセミラミスSEMIRAMIS)の内ジャケを見て気分が悪くなって戻しそうになった時とは正反対の気分に 浸れます。

叙情派ブリティッシュプログレ、天上の響きフォーク、哀愁のイタリアンプログレ等、夢を見させてくれる作品は数多くありますが、夢見心地と いう意味でこのアルバムの右に出る作品はまずはありますまい。

アルプスの少女ハイジに出てくる山小屋の藁の上で、小春日和に何も気にせずにうたた寝をする感覚に似ているものがあり(したことないけど)、 本当に幸せな気分に浸ることができます。

ヒーリング音楽全員が土下座して謝る、もしくは宮崎駿監督作品のエンディングで是非かけてもらいたいそんなグレートな内容の音楽なのです。

A面1曲目の流れなんてもう美の極み。聴く者の内面に直接響く究極のフィメール・ヴォーカル。春の小川のせせらぎの横をベニシジミが飛ん でいるような心の全てが浄化されていきます。

渋谷の街角なんかでも、こんな曲を毎日流せば犯罪も減るんじゃないかと、無宗教の私でさえそう思います。

そしてA-3『キャッチ・ザ・サン』で一気にクライマックスへ。

ジャーマン・ファンタジック・プログレはこのアルバムを含めジャーマン三美神といわれる3つの素晴らしい作品があり、それらは どれも白昼夢必至なので、その手の方は必携の作品です。

ちょっと誉め過ぎの感もありますが、要はこの暑い夏を乗り切るのにお薦めの一枚という事です。

(2005.07.20)