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第143回 HOLDERLIN  "Holderlin's Traum"

HOLDERLIN - "Holderlin's Traum"
1972 GERMAN PILZ 2021314-5
(Folk Rock)

RARE:★★★★★

Member : 

Nanny(vo), Nops(key,violin,flute), Peter-Kassim(b),
Michael(ds), Jochen(g,key,cello), Christian(g)


Side (A)
1. Waren Wir
2. "Peter"
3. Strohhalm
4. Requiem Fur Einen Wicht


Side (B)
1. Erwachen
2. Wetterbericht
3. Traum




ドイツというと難解なプログレかドロドロのヘヴィーロックか真っ白な ウインナーくらいしか思い浮かばないという方もいらっしゃると思います が、ここで紹介するアルバムはドイツでも異色のフィメールプログレです。

フィメールプログレとはいってもそんじょそこらのフツウのフィメールも のとは別格の内容で、ハードロックファンだろうがイタリアンプログレ ファンだろうがクラシックファンだろうが、間違いなく聴いた人間を 一発で黙らせる、そういう風格と気品あふれる素晴らしい作品です。

ドイツという国からの作品というだけの理由で、マニアからは ブリティッシュものにくらべて低い評価となっており、また知名度も 低いようですが、そんな偏見を捨て去って真っ白な気持ちで聴くと、 スパイロジャイラ(SPIROGYRA)の最終作やチューダー・ロッジTUDOR LODGE)とも対等にわたりあえるくらいの水準のもので、ヘタしたら それ以上といっても過言ではないかも知れません。

方法論としてはトレイダー・ホーンTRADER HORNE)あたりに似ていなく もないのですが、そういう表面的な部分とは違うところにこの作品の 真実がある、そんな気にさせられます。

合気道の塩田剛三先生のように一流の格闘家は技をかけるのに殆ど力を 入れていないようにみえることがありますが、このアルバムも全くそれに 近いものがあって、ほとんど力らしいものは入っておらず、とにかく流れ が自然なんです。

アルバムジャケットのデザインからしてもう『これは普通のロックでは ないな。』という覚悟はしていたのですが、それでもA-1の出だしの 一音だけでムツゴロウさんににらまれた野性の動物のように言葉を 失ってしまいます。 更にこの世のものとは思えない神秘的な女性ヴォーカルが入ってくると、 そっから先はめくるめくマイナスイオンの洪水がこれでもかこれでもかと 押し寄せてくる白昼夢のような世界が広がっています。 アルバムタイトルにあるトラムとはケーブルカーのことではなく、『夢』 という意味のようですが、起きながらにして夢をみることのできる 数少ないアルバムです。

風呂あがりに安楽椅子に揺られて聴いたら言葉通り安楽死間違いなしです。

なお、この作品は彼らの1stアルバムにあたるもので、この後も何枚か アルバムを発表しているのですが、2ndアルバム以降はこの1stアルバムを 支配している神秘性が全くなくなっており、むしろ別グループと思って おいた方が良いと思います。

ドイツでは他にイムヂチEMDITI)というグループの1stアルバムがこの 作品と同傾向の内容となっており、こちらも必聴です。 ただ内容的にはやはりこちらの方が数段上であるというのは異論の余地が なさそうです。


(2004.02.29)