第344回 DRUGI NACIN - Same Title | |
1975 YUGOSLAVIA-RTB 55-5252 (Hard Rock) | |
RARE度: ★★★★★ | |
Member : Halil Mekic(g,vo), Zeljko Mikulcic(b,vo), Branko Pozgajec(vo,key,flute), Ismet Kurtovic(flute,g,vo), Boris Turina(ds,vo) |
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Side (A) 1. Opet... 2. Carstvo Samoce 3. Na Mom Dlanu |
Side (B) 1. Lile Su Kise 2. Zuti List 3. Stari Grad |
ドルギ・ナチンは、旧ユーゴスラビアはクロアチアのハード・ロック・ バンドです。 バンド名のドルギ・ナチンとはOther Way(別の方法)という意味 だそうですが、水面に逆さに写ったメンバーの姿が、なんとなくそれを 表してもいるようで、ロックをやろうか、という若者のひねくれ具合を 感じます。70年代なファッションと髪型、その出で立ちが、いかにも ハード・ロックをやってるぜ!という意気込みも感じで、東欧の 旧ユーゴでもやってくれていたんだな、と、表ジャケだけで、まずは ニヤニヤできます。 さて肝心の内容ですが、これはもうユーゴのハード・ロックの中でも 全く抜きん出たレベルの一枚と言っても過言ではないでしょうか!? アルバムはこれ1枚のようで、もっともっと他のアルバムを聴きたかったそんな高水準の作品です。 A面は驚愕の出来栄えです。イケイケのハード・ロックでいながらも 骨太、ドイツとイギリスの味わいが入り混じったアップテンポな ナンバーのA1は、ハイトーンのヴォーカルから、イギリスのユーライア・ ヒープ(Uriah Heep)か、ドイツのナイト・サン(Night Sun)か!?と 言ったところで、まさにオープニングに相応しいナンバーです。 続くA2は私の一番のお気に入りです! ミドル・テンポの出だしで始まり、手数の多いキレキレ・リズム・セクション。そしてこの耳慣れないクロアチア語のイントネーションが 奇妙な魅力で、ゴキゲンです。そしてツイン・リード・ギターのユニゾンでのメロディアスな刻みはUFOあたりの名曲をも軽く凌駕する程の圧倒的カッコ良さ!! さらに、ドイツのエロイ(Eloy)の名曲をもっと大人っぽくして、そこにウィッシュボーン・アッシュ(Wishbone Ash)までもが参戦して しまったかのような、ずっしりと地に足の着いた名曲のA3と続きます。 また、ヴォーカルがいいのです。普通に歌っているときはABCのマーティン・フライ(おいおいニュー・ロマンティックかい!?)の ようなジェントルでかつ甘さも兼ね備えた美声は、盛り上がるにつれて序々にハイ・トーン化していく・・・、チャイルド・イン・タイムを 思いださずにはいられない展開とも言えますが(あぁ言っちゃった!)、それでもユーゴ・ハードを代表する名曲であることは間違いありません。 B面に来ると、オープニングのA1とは打って変わってシットリとした曲調に転じ、B2でテンポを上げてフルートまで投入してきますが、さらに 後半はメロディアスに、コーラスも曲も美しく、歌い上げてきます。美しい内ジャケの写真はこの辺りの印象なのかもしれません。 一枚を通した構成の出来も良く、片面3曲づつでもあまり冗長にならず、全編にわたってテンションを落とすことなく聴けるので、欧米の 名だたるハード・ロックで耳の肥えている方々にもお薦めです。 クロアチアといえば、格闘家のミルコ・クロコップをご存知でしょうか?現役当時、試合前のインタビューで、「俺の国では友達が眼の前で撃たれて 死んでいくんだぞ!そんな経験お前らにあるのか?」と凄いことを言ってたのが印象的で、そのまま私の『クロアチア』のイメージに繋がって いたのですが、東側とは言え、ユーゴ紛争の前には、こんないでたちでハード・ロックをやってくれていたのか、と思うと感慨も深い一枚でも あります。 複雑な近代史も感じながら是非。 (2013.07.31) |