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第320回 EMILIO LOCURCIO "L'Eliogabalo" |
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EMILIO LOCURCIO - "L'Eliogabalo" |
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RARE度:★★★★ |
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Member : |
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Rosalino Cellamare, Lucio Dalla, Teresa Desio, |
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Side (B) |
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ポップ・オペラという名のもとに発売されたアルバムで、恐らくこれが 唯一の作品と思われる、イタリアン・プログレの快作・奇作です。 圧倒的なジャケット・アートからは、アングラでドライな感じのサイケ・ フォークの駄作ではないかと思わず警戒してしまいますが、冒頭の 怪しげなささやきで幕を明け、なんかやばいな・・と思い始めた丁度 その瞬間に来るギターの音色がまた実に怪しげで、オペラ劇場の裏の 真夜中のゴミ捨て場のような雰囲気が抜群です。 さてさてどうなるかと思いきや、まるでレアーレ(REALE ACCADEMIA DI MUSICA)のA-2の傑作のような深いピアノが静かに迫ります。 そして飛び出す、早口ヴォーカル、エミリオの登場です! おーなんだこれは!?今まで聴いたことない唄法だぞ!!!と、ちょっと のけぞってしまった体勢を立て直す間もなく、ヴォーカルはエスカレート していきます。すわ、イタリアのエマニュエル・ブーズ(EMMANUEL BOOZ) か?名前も似ているぞ!?いや、もしかしたらそれをも超越しているかも しれません。 奥ゆかしいピアノの響きがヘヴィーに展開するあたりは、ギリシャの アクリタス(AKPITAZ)や同じくイタリアのファビオ・チェッリ (FABIO CELI)をも彷彿とさせ、このレコードを40年も聴いてこなかった 自分の人生が実に悔やまれるのであります。 全く飽きの来ない展開が一通り落ち着くと、泣き泣きギターの昇天に、 そしてまたかのピアノは初期のバンコ級、ギターはジャンボ級です。 リズムのブレイクとヴォーカルの巻き舌はビリエットが好きな人にも 応えられない展開だと思います。 B面は生ピアノ一本に時折ストリングスも入り、それをバックに 相変わらずの早口ヴォーカルが物哀しく、そして情熱たっぷりに歌い 上げます。素晴らしすぎる・・。 B-2はやや行き過ぎの感もありますが、そこを乗り越え一瞬プログレに 戻るかと思うと、ゲスト・ヴォーカルがさらに早口でまくしたて、 サックスまで入り混沌の極みに至ります。 くどすぎるヴォーカルがダメな人には向かない可能性もあり、好き嫌いが 激しく分かれそうな位の強いアクのあるアルバムですが、それこそが、 イタリアン・プログレの真骨頂とも言え、加えて『ポップ・オペラ』と いうことで静かな調べに、山あり、谷あり、涙あり…。熱き血潮は沸点に 達し、本当にめくるめく音迷宮は、イタリアン・フリークには ど真ん中ではないでしょうか? しかしいまだにこんなのに出会えるからコレクターはやめられません。 節電の夏、エアコンを切れば『暑さ』を味方に更に『熱く』 楽しめる一枚です。でも熱中症にはご注意を!? (2011.06.30) |