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第251回 PRETTY THINGS "S.F.Sorrow" |
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PRETTY THINGS - "S.F.Sorrow" |
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RARE度:★★★★ |
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Member : |
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Phil May(vo), Wally Allen(b,g,vo,key), Dick Taylor(g,vo), |
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Side (B) |
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60'sブリティッシュ・ビートの雄、プリティ・シングスの4作目です。 3rdアルバムまでは典型的なブリティッシュ・ビート・サイケだったのが 本作で大化けします。 60年代にイキのいいビートを炸裂させていたビート系のグループが、 60年代後半になるとまるでしめしあわせた桜の開花のように一斉に トータル・コンセプト・アルバムを発表するのですが、この作品は実は そんな変革期の先駆けとなるもので、ロック・オペラの名作として 誉れ高いザ・フー(THE WHO)の『トミー(Tommy)』よりも1年以上早く 制作されています。 世間一般の見方や興行的な結果にはかなりの差が出てしまっていますが、 ザ・フーの『トミー』、スモール・フェイセズ(SMALL FACES)の 『オグデン(Ogdens' Nut Gone Flake)』、キンクス(KINKS)の 『アーサー(Arthur Or The ...)』と並ぶ60年代ブリティッシュ4大 トータル・コンセプト作品だと思っています。 『SFソロウ誕生』というタイトルのA-1ですが、その出だしのギターの 響きだけでも、今までの彼らのサウンドから一皮むけたものだと 思わずにはいられません。 彼らの場合、他のビート・グループと違ってサイケデリックな香りが 独特の雰囲気を醸しだしていて、こういうのが好きな人には答えられない 作品です。 A-2のバックで漂うさりげなくトリップしているコーラスはなんとも言えず いい味で、東洋調に展開するギターも絶品。ギターの音色はこの曲だけ ではなくアルバム全体に亘って実にイイです。スモール・フェイセズの 『レイジー・サンデー(Lazy Sunday)』で文字通り日曜のレイジーな 昼下がりに公園のボートに揺られてトリップできる方でこの作品が まだの方には是非聴いて頂きたいです。 そしてやっぱり必殺はA-4です。 ゆったりとしたドラムスの刻みに導かれて炸裂するギターのイントロは、 まさに爆発するバルーンを彷彿とさせるもので、もう後は一気に 真っ逆さまに落ちていきます。 そしてこの曲の後に続く曲はタイトル通りの内容。レクイエムのように やわらかい暗闇に包まれていく様は、石焼ステーキを食べた後の赤だしと ご飯と漬物のように五臓六腑にしみわたってきます。 個人的な好みもあるのですが、やはりトータル・コンセプトというのは いいですね。聴くもののイマジネーションを掻き立てる何かがそこに ある! そんな気がします。 彼らはこの後、傑作『パラシュート(Parachute)』を発表し、解散。 解散後に本作を中心に再評価され、何度かの再結成を繰り返している ようです。 意味がわかりそうでわからない不思議なジャケットも逸品です。ちなみに 本作のアメリカ盤はジャケ違いの変形ジャケットになっています。 (2007.04.30) |