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第354回 SUNCOKRET - "Moje Bube"
   1975 YUGOSLAVIA RTV LJUBLJANA LD0363 (Folk Rock)
RARE度:★★★★★
Member :
Borisav Dordevic(g,vo), Snezana Jandric(vo), Nenad Bozic(g), Gorica Popovic(vo), Biljana Krstic(vo), Miodrag-Bata Sokic(key)
Side (A)
1. Moj Kara Mustafa
2. Ni Sam Ne Znam Kada
3. Moje Bube
4. Moje Tuge
5. Moj DerDane
6. Moj Vuk I Moja Krava
Side (B)
1. Posalji Mi Moje Pismo
2. Slucaj Mog Raskopcanog Jeleka
3. Moj Oglas
4. Moja Uspavanka
5. Moj Prvi Sneg


旧ユーゴスラヴィア、セルビアのスンツクォレート77年の作品です。 バンドは75年に結成されたようですが、作品としてはこの1枚のみです。

旧ユーゴというと、70年後半であっても60年代後半の音をしているハードロックやプログレも多く、時代的に欧米あたりより10年は古いとも言われてもおり、英国の深い森で、ドラマティックで格調高い英国フォークやプログレにおぼれていた方々にとっては、洗練度が 落ちる物足りなさか、すわ『B級』と括る声があるのも事実です。

ただ、その一方で突然変異的なプログレも存在しており、例えば女性ヴォーカルをフィーチャーしたオルガン・ドラマティック・プログレの 傑作イペ・イ・ラザ(IPE I LAZA)の存在等も忘れることができません。

例えばイペ・イ・ラザが宇宙空間を漂うかのドラマティックさを持っているとすれば、このスンツォクレートは濃い緑の香りたちこめる草原を 奔放に旅しているのか、はたまたジャケットのイメージ通り昆虫たちの世界のお話なのか、そんな感じです。

いわばスペーシーなイペ・イ・ラザとアーシーなスンツォクレート。

昆虫たちが楽しそうに演奏しているジャケットがまた秀逸で、それ故か、これはハズレかはたまた…と不安な気持ちも否めないまま、恐る恐る 針を落とすのですが、そこには実にバラエティに富んだ世界が待っています。

基本的にはフォーク・タッチの曲構成で、冒頭のA-1はブリティッシュ・フィメール・フォークの二軍ような曲調で、正直に言うと、“あ、 失敗かも…"感がなくはなく、いやな汗も出てきますが、これはほんの序章にすぎません。

この調子が一本調子で続くとそれこそ単なるフォークですが、球は決して真っ直ぐではなく、微妙な変化が良い味付けになっています。

ジェントルな男性ヴォーカルで曲は導かれるA-2では、サビに突入すると夢うつつの女性ヴォーカルがゆらゆらと実に素晴らしい。 ユーゴ屈指の白昼夢ナンバーといってよいでしょう。まるでイペ・イ・ラザが地上に降りたかのような(なんじゃそりゃ)錯覚に 陥りますが、こっちはもっと煮えきらなくてその煮えきらなさがまたなんともいえず良い感じです。

シンプルなヴォーカルがせつせつと歌い上げるA-4のバックではセピア色のアコースティック、そしてフィメール・ヴォイスの コーラスが被さり、もうバスク・フォーク・レベルの美しさです。

期待のB面ではオーケストラも入り、後半にいくにつれ、どんどんプログレ色も強まります。プログレといっても定石に囚われない 型破りなもので、A面であれだけ物憂げだった女性ヴォーカルが一変、劇的に力強く歌い上げていくその変身振りも実に魅力的です。 B-3が一つのクライマックスなのか、ドラマティックで叙情的な素晴らしい曲が待っています。

聞く機会のない言語のストレンジな部分も含めてそういうところがユーゴ・ロックの魅力の一つですが、それも手伝ってか、洗練された ブリティッシュ・フォークや情熱的なイタリアン・プログレとは全く違う、いい意味でどの曲も常に予測を裏切る展開がとても新鮮です。 世界には埋もれた名作がどのくらいあるのだろうか?と、改めて70年代の奥深さを思い知る一枚でもあります。70年代恐るべし。

バンド名のスンツクォレートとはセルビア語で『ひまわり』だとか。東欧の『ひまわり』で、蒸し暑い日本の夏を凌くのは如何でしょう!? まだまだ暑い日が続きそうですが、お気をつけて!

- 4502223 SUNCOKRET/Moje Bube → http://bit.ly/UD3VUK
  
(2014.07.31)