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第337回 CREAM "Fresh Cream"

CREAM - "Fresh Cream"
1966 UK-REACTION 593 001
(Blues Rock)

RARE:★★

Member :

Ginger Baker(ds,vo), Jack Bruce(b,harmonica,vo),
Eric Clapton(g,vo)


Side (A)
1. N.S.U.
2. Sleepy Time Time
3. Dreaming
4. Sweet Wine
5. Spoonful



Side (B)
1. Cat's Squirrel
2. Four Until Late
3. Rollin' And Tumblin'
4. I'm So Glad
5. Toad


今更クリームというのも少し気恥ずかしい気もするのですが、 ビートルズを筆頭にプレスによる音の違いが盛んに語られる昨今、 私にとっては、アメリカ盤とイギリス盤の違いを最も強烈に 突きつけたこのアルバムです。

クリームというと2枚組み傑作の3rdアルバムか、ジャケがとんでもなく 素晴らしい2ndアルバムと相場が決まっていて、まずはこのへんから 聴くのが王道とされているのに比べると、1stは、取り上げられることが 少ない気がしてならないのですが、実は聴きこめば聴きこむ程に味が 出てくるのは、むしろこのアルバムではないかと思っています。

デビュー・シングルの『I Feel Free』が収録されているというだけの 理由で、迷うことなくアメリカ盤を入手して機嫌よく聴いていた時期は、 要するにすっかりアメリカ盤の営業戦略に乗せられる位ウブだったわけ ですが、そのせいで『ファースト・アルバム=キャッチーでポップ』と 決めつけ、ハードな曲を聴きたければ2ndかライブ、と思い込んだまま 長い年月を過ごしてしまったのです。

時が流れ、大人になった私はて改めて『I Feel Free』の入っていない イギリス盤を手にしてみて、初めて本物を知る事になるのです。

もちろん印象は一変。A-1がいきなりこの曲ですか!?!?と たまげるのですが、もう大人の私。逆にど真ん中に投げ込まれた 感じです。コレコレ!!聴きたかったのは!でした。

A-1はいわゆる地味渋な曲で、いまとなってはこの上ない素晴らしい ナンバーですが、YouTubeなんかない時代、予備知識なしに このアルバムを買ってきて初めて針を落としたとしたらどんな 感想をもつのだろうかと想像するだけでニヤニヤします。

A-2はもっと渋いブルースですし、今から思うと完全に大人の音楽、 若い女性がキャーキャー聴くようなシロモノではありません。 唯一ポップなのは、実はB-4の「I'm So Glad」くらいだったりします。

そして、アメリカ盤には収録のない、激シブのA-5の『Spoonful』が アメリカ盤との印象の違いを決定的にします。『I Feel Free』も 非常に惜しい、こちらも欠かせない…やはりアメリカ盤とイギリス盤の 両方が必要なのか、、、悩ましい所です。

ジャック・ブルースの歌声が暗いのか、はたまたジャケが暗いせいなのか、 内容の良さはさておき、UK盤になるともっと暗くて重い印象が増します。 キャッチーなフレーズや激しい曲になっても暗い感じで、その暗さ加減が もうちょっと堪らないワケですが、ジンジャー・ベイカーのドラムスも 彼の真骨頂たるドタバタ・ドタバタ・ドラミングが炸裂して、なんとも 嬉しいのです。

ヤードバーズのポップさが嫌で『For Your Love』でとどめを刺されて 脱退したという話ですが、そのクラプトンが今度こそはと弾きまくる ギターも、今からするとそんなにすごいギターでもなく(コラッ)、 確かにヤードバーズと比べると格段に水準が高くて渋いアルバムでは ありますが、では『Little Games』と比べてどうかというと微妙な 感じもしたりして、『Little Games』と言われたらクラプトンは ヤードバーズを去らなかったのか、去ったから『Little Games』が 出来たのか…。いずれにせよ巨人たちの生まれた輝かしい時代と いうことで、とりとめがなくなりそうな話をまとめておきます。

しかしジャケはもう少し工夫が欲しかった気もします。裏ジャケも 地味だし。だから余計に2ndのジャケが目だってしまうとも思います。

(2012.11.30)