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第319回 DICK HECKSTALL-SMITH "A Story Ended"

DICK HECKSTALL-SMITH - "A Story Ended"
1972 UK BRONZE ILPS9196 (Progressive Rock)

RARE:★★

Member :

Dick Heckstall-Smith(sax), Paul Williams(vo), Caleb Quaye(g), Rob Tait(ds), Mark Clarke(b), Jon Hiseman(ds), Dave Greenslade(key), Graham Bond(key,vo), Chris Farlowe(vo), Chris Spedding(g), Gordon Beck(key)


Side (A)
1. Future Song
2. Crabs
3. Moses In The Bullrushourses
4. What The Morning Was After


Side (B)
1. The Pirate's Dream
2. Same Old Thing


ディック・ヘクストール・スミス。ブリティッシュ・ロック界を代表するサックス奏者です。

サックスを2本同時に奏でる驚きのプレイヤーで、ブリティッシュ(ロックね)の歴史を作った人と言ってもいいでしょう。

2005年に惜しくも亡くなってしまいましたが、私が新入社員だった時の部長によく似ていたので(知るか)他人とは思えないところがありました。

今更ご説明申し上げるまでもないのですが、ブリティッシュ・ロック、(いやジャズ・ロックというべきでしょうか)界で、素晴らしい経歴を 渡り歩いてきた方で、グラハム・ボンド・オーガナイゼイション(GRAHAM BOND ORGANIZATION)や、コロシアム(COLOSSEUM)等に参加 していたことも良く知られていますね。

さて、とりあえずはジャケットが地味すぎるこのアルバム、コロシアム解散後、それを惜しむかのように発表されたもので、名義的には彼の ソロ・アルバムではあるものの、メンバーをご覧ください!わかる人にはわかる、正に、コロシアムの最強メンバーの重要どころが ほとんど参加、そこにグラハム・ボンドやテンペスト勢、ニュークリアス勢も加勢するわで、殆ど夢のセッション・アルバムに 仕上がっています。

A-1ののっけからぶっ飛びますが、ポール・ウィリアムスがヴォーカルをとる曲、例えばA-2やA-4なんかは、演奏も凄いこともあって、 テンペスト(TEMPEST)にサックスが入ったかのようなカッコよさです。いや、彼のヴォーカルという意味ではテンペストよりジャズっぽい 雰囲気のせいか、こちらの方がしっくりくる感じさえします。

そして2曲という大作構成のB面では、いよいよクリス・ファーロウ先生のお出ましです!!

ジャズ・ロックやブルースを歌わせたら、この方の右に出る者はいないのではないかと思いますね。私は。

いや、しかし、やっぱりB-1でしょうか。

ドラムスはハイズマンで、ギターはスペディング、と、アルバム中最強の布陣です。こうなるともうギターは抜群にかっこよくて、そこに グラハム・ボンドのムーグが絡み、尋常でない手カズのドラミング、静けさの後にサックスが夕焼けを赤く染め上げ、そして、うわっ! コーラスも入って、なんだかわからないけど、とにかく凄すぎる・・・!!本当にこのユニゾンは、正しくコロシアム全盛期ライヴ級の音なのです。

そしてラストは、ポール・ウィリアムスのヴォーカルで〆です。

一次会でお店を壊さんばかりに盛り上がったメンバーの大半が終電で帰ってしい、残されたメンバーで静かに二軒目に行くとでも いったところでしょうか。こんな俗っぽい表現は、どうかとも思いますが、そんな感じの、やたら渋い曲です。

しかし、この手のセッション・アルバムには、ヴォーカルなしで、かつジャムり過ぎの感があるものが多いのですが、このアルバムのように 全曲きちんとヴォーカルが入っている(しかもこんなメンツの!)方が個人的には聴きやすい事もアリ、お気に入りの理由なのかもしれません。

最初に申し上げました通り、ジャケがあまりにあっさりしているのと対照的な内容の凄盤からは、レコードも人間も外見で判断しては いけないのだ!という教訓すら感じ、こういうアルバムのように、濃い〜内容の人間になりたいものだと、ちょっと哲学チックに(?) 今回は締めくくらせて頂きたいと思います。


(2011.05.30)