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第312回 GROBSCHNITT "Same Title"

GROBSCHNITT - "Same Title"
1972 GERMAN BRAIN 1008(Progressive Rock)

RARE:★★★

Member :

Joachim Ehrig(ds), Axel Harlos(ds), Stefan Danielak(g,vo),
Bernhard Uhlemann(b,flute), Gerd-Otto Kuhn(g),
Hermann Quetting(key)


Side (A)
1. Symphony
2. Travelling


Side (B)
1. Wonderful Music
2. Sun Trip



ジャーマン・ロック、異端のプログレッシヴ・ロック・グループです。

混沌としたサウンドやドロドロのサイケ、暗黒のヘヴィー・ロック等 独特の雰囲気のグループの多いジャーマン・ロックの中でも強い個性を 放つバンドで、デビュー・アルバムにあたる本作の後も、何枚か発表して いますが、内容的にはこれが一番良いのではないかと思います。

まず特筆すべきはやはり何といってもA-1!

冒頭のコーラスの不気味で荘厳な響きは、非常にシュール性が強く 唯一無二の暗黒的な美しさで、視覚的に訴えてくるものがあります。 『オーメン』のサントラの崇高さに魅力を感じる人は必聴といっても 過言ではありません。

アルバム・ジャケットもかなりシュールですが、それよりも音の方が よっぽど深い内容です。しかもこれでいて曲名は『シンフォニー』。

冒頭のコーラスは、あたかもサブリミナル効果のように、曲後半でも 効果的に挿入されていて、聴く者の感覚を支配していきますが、曲が 進行するにつれ、この効果が薄れるのか強すぎるのか、もう普通の プログレだな、と思い始めてしまうのです。

昔懐かしい異種格闘技戦で、猪木が戦ったモンスター・マンやチャック・ ウェップナー等がゴング当初は異様な緊張感に包まれていたのが、 ラウンドを重ねる毎に神秘性がやや薄らいでいく、そんな感じといえば わかっていただけるでしょうか?

とは言え、不気味さや緊張感の持続こそないものの、全体を通して 演奏はかなり重厚で、何重にも塗り重ねられた漆のような厚みのある キーボードが全体を支配しています。B面に至るや、シンフォニックや 台詞調の展開もありで、全く一筋縄ではいかないサウンドには、 終了間際にバタバタしてしまう異種格闘技戦と遠からず近からずの印象も ありますが、そうして引っ張られた挙句には、十分な聴き応えを感じて 頂けるはず。

一つ残念な点があるとすれば、内ジャケ。開いてみても表と同様路線の アートワークは、外ジャケの不気味さを増長させてくれはするものの これがもっとアヴァンギャルドであれば、グレイシャス(GRACIOUS)級の 感動があったのではないでしょうか。

70年代初頭のドイツでしか生みだされなかったであろう名作の一枚に 数えられるべきアルバムだと思います。

(2010.10.30)