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第49回
GRACIOUS!
"Same Title"

GRACIOUS! - "Same Title"
1970 UK VERTIGO 6360 002 (Progressive Rock)

RARE: ★★★★

Member : Paul Davis(vo,g,tympani), Martin Kitcat(key,melotron), Alan Cowderoy(g,vo),
Tim Wheatley(b), Robert Lipson(ds)
Side (A)
1. Introduction
2. Heaven
3. Hell
Side (B)
1. Fugue in 'D' minor
2. The Dream

ブリティッシュプログレッシヴロックの特集ものには必ずといって良い程登場する定番アイテム。
ブリティッシュロックの偉大なる遺産を数多く輩出した名門レーベルVERTIGOの6360シリーズの002番にあたるもので、一般のプログレマニアをアンダーグラウンドなコレクターの世界に引きずりこむきっかけとなることの多い、有る意味罪深い作品でもあります。
このVERTIGOレーベルというのは、レコードコレクターの方々には今更説明する必要のないくらい有名なレーベルで、特に独特の渦巻きのロゴが入っている初期の作品は、昔からマニアの間でも人気の高いものです。(私にとっては『ルイヴィトン』とか『シャネル』なんかより、こっちの方が、“ブランド”って感じです)

廃盤のプレミアムというのは、その時々のブーム(という程大袈裟)によって値があがったりさがったりすることがあるのですが、この由緒正しいVERTIGOレーベルのものは非常に安定していて、ほとんど値崩れすることがありません。
その辺の日本の優良企業の株を持っているよりは、よっぽど財テクになるんじゃないでしょうか。
音楽は企業の決算より正直だし。(おいおい)

さて内容の方ですが、ひとめ見たら忘れられない印象的で簡素なジャケットデザインからは想像もつかないような複雑に構築されたもので、これこそ真の意味でのプログレッシヴです。
聴けば聴くほどこの恐ろしいほどに計算しつくされた緻密さに恐れ入ってしまいますが、かといって聴きづらい内容でもなく、でも決してポップではありません。(この微妙なニュアンスわかって頂けますか)

躍動的で叙情的なA-1がもういきなり素晴らしい。メロディアスで美しい小川のせせらぎのような調べの裏で、ベースとドラムスがアンダーグラウンドに迫ってきます。(どんなんだ?)
そしてプログレマニア全員が涙を流したと言われるA-2。
この曲のイントロのメロトロンの響きといったらもう、大変だでかんわと思わず名古屋弁になってしまいます。
この曲をバックに、夕日の沈む海岸でも見ていたりしたら、『よし、もう絶対こんな会社やめてやる!?』なんて決意を新たにしてしまう、そんな曲です。
冗談はさておき、このメロトロンが響いているところにむせび泣くギターが絡んでくると、曲名の通りすっかり気分はヘブンです。
メロトロンのプログレグループというとKING CRIMSONが有名ですが、個人的にはわたくし『クリムゾンキングの宮殿』よりも、こっちの方が良いと思います。(げっ、言ってしまった)

B面は2曲。A-1のようなハープシコードが美しい小品に続いて、大作B-2です。
この曲はアルバム中最も複雑な構成で、ハード系のギターのイントロから一転してベートーベンの月光に移行する絶妙の幕開けから、即死必至のエンディングまで見事という他ありません。

ブリティッシュプログレの名作として、大英博物館に陳列してもらいたい芸術的な作品。
オリジナルジャケットは見開きで表面がぶつぶつのエンボス加工となっています。
そして、見開きジャケットを開けるとその中には...!