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第309回 BANCO DEL MUTO SOCCORSO "Io Sono Nato Libero"

BANCO DEL MUTUO SOCCORSO - "Io Sono Nato Libero"
1973 ITALY-RICORDI SMRL6123 (Progressive Rock)

RARE:★★

Member :

Vittorio Nocenzi(key), Gianni Nocenzi(key),
Marcello Todaro(g), Renato D'angelo(b),
Pier Luigi Calderoni(ds), Francesco Di Giacomo(vo)


Side (A)
1. Canto Nomade Per Un Prigioniero Politico
2. Non Mi Rompete


Side (C)
1. La Citta' Sottile
2. Dopo... Niente E' Piu' Lo Stesso
3. Traccia II



イタリアン・プログレの最高峰、バンコの誉れ高い初期3部作のうち、 『最後の輝き』とも言えるサード・アルバムです。

1stの凄まじいインパクト、2ndの音迷宮に比べると、やや後塵を 拝する感は否めませんが、都会的な洗練度という点では一番だと思います。

邦題『自由への扉』、そして、この扉型の変形ジャケットは、1st程の 懲りようではないものの、やはりそれなりの変形ぶりで、こういう ジャケットのレコードが、発表当時は普通にレコード屋さんの店頭に ズラリと並んだのかと思うと、楽しすぎる時代ではないでしょうか?

内容的には、前2作が持っていた『ロックっぽさ』がやや後退している為、 ロック・ファンへの受けは微妙かと思いますが、派手さがない分、 ウェットな感覚が強く、鍵盤の響きが極上なのです。

静かでやさしい独特の歌声の調べで幕を開けるA面は、いつのまにか 「燃えよドラゴン」の最終戦闘シーンのような、キーボードいっぱいの 迷宮が繰り広げられていきます。

この鍵盤音迷宮は、ラテン系の明るさをフィレンツェの石畳でひた隠して バチカンの歴史と伝統に押しつぶされるような重厚な前2作の感じとは 少し異なり、イタリアの香りを残したまま、南米のジャングルに さまよいこみ、そしたらスコールで真っ暗になりずぶぬれになって 右も左もわからない、そんな予想だにつかない展開を繰り広げます。

そしてジャングルを抜け出したら、突然雨はあがり、美しい朝焼けが 差し込み、小鳥がさえずる、いったいここはどこだったんだろう、 すると耳を澄ませば昔聴いた歌声が・・。(なんのこっちゃ!?!?)

ここで聴かれるフランチェスコ・ディ・ジャコモの歌声は、いつもの ような「歌い上げ」系のオペラチックでドラマチックなものとは違い むしろ、少しリラックスかつ垢ぬけた都会的な印象です。

B面に至ってはさらに完成度が高く、少し難解で、奥の深い作品です。 ミュージカルとオペラを足してプログレで割った、そんな不思議な 感覚で、後半の盛り上がりは相当な興奮と感動を与えてくれます。

あまりに水準が高いデビューアルバムは、後で振り返ると1年目が 一番凄かった清原和博のようですが、それでも3枚目までは 伝説というに十分な出来栄えで、『マニアなら必携』といつもの セリフで終わらせて頂きます。


(2010.06.30)