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第308回 HERON "Twice As Nice & Half The Price"

HERON - "Twice As Nice & Half Price"
1971 UK-DAWN DNLS3025 (Folk Rock)

RARE:★★★★

Member :

Roy Apps(vo,g), Tony Pook(vo, per), Gerald T.Moore(vo,g,key), Steve Jones(key)


Side (A)
1. Madman
2. Take Me Back Home
3. Love 13
4. Something Inside
5. John Brown

Side (B)
1. Winter Harlequin
2. The Sound Of Music
3. Your Love And Mine


Side (C)
1. You Really Got A Hold On Me
2. The Great Dust Storm
3. My Turn To Cry
4. The Old Heart Of Mine
5. Minstrel And A King

Side (D)
1. Getting 'Em Down
2. I Wouldn't Mind
3. He's A Poor Boy
4. The Devil
5. Wanderer
6. Harlequin 6


英国フォークの中でもひときわ異彩を放つ傑作です。

1stアルバムが見開きで1枚モノなのに対し、この2ndは2枚組みで 閉じジャケ・・、ということで、関西人でなくとも、関西弁で 『なんでやねん』と突っコミたくなることからこのアルバムは始まります。

1st同様屋外録音で、雰囲気抜群のジャケットもあわせて、英国フォークの 中でも屈指の『野外フォーク』です。

誰が名付けたか『木漏れ日フォーク』とは良く言ったもので、アルバム 全体を支配しているのは異常にリラックスした世界で、陽あたり良好な 中で木漏れ日が眼に痛い、そんな情景が広がっていきます。

同じ『フォーク』という括りにはあっても、湿気たっぷりの日本の 『四畳半フォーク』や『反戦フォーク』とは既に異なる次元にあり、 さりとて『トラッド』のように極端に格調が高いわけでもありません。

また『リラックスした世界』とは申しましたが、マッサージサロンで 流れているような凡百の『ヒーリング・ミュージック』とも全く異なる のは、リラックスしたムードながらも真剣に向かい合って聴くのに 耐えうるだけの奥深さだと思います。100回、200回聴いたくらいで 飽きてしまうような音楽ではありません。

この無添加・無農薬なオーガニック系の味わいは、謂わば最近流行りの 『奇跡のりんご』。どんなに時間が経っても変色したり、味が落ちたり しないのです!

そして、また思うのは、音楽というのは本当に奥が深い・・・という所で、 『英国フォーク』と一口で言っても、ここにしかない音が確かに 存在しており、これはこれで簡単にマネのできない世界は、いくら 腕達者がコピーしてもあの雰囲気は絶対に出せないと言われた 『ツェッペリン』同様、『オリジナリティ』というポイントでもあり、 ヘロンもまた伝説として残る為の必須条件を備えていたのだと 気付きます。

どの曲がどう、と語るアルバムではありませんが、A-2とかC-1の雰囲気が、 まどろみと郷愁たっぷりでとても好きです。 更に希望を言うなら、こういう音楽は室内やポータブルプレーやーや カーステではなく、可能な限り人気のない、クルマでしか行けないような 田舎の山奥の池のほとりで、赤ワインでバーベキューをやりながら (飲むなら乗るな)、横で飛び跳ねているバッタを横目に・・・、 そんな環境で一度聴いてみたいものです。(でもプレーヤーは どうするのか・・・。)

飲み疲れて丸太を半分に切ったような長椅子に横たわって、うつら うつらしていたらB面が終わっていた、みたいな。

妄想は尽きません。

(2010.05.30)