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第258回 HERON  "Same Title"

HERON - "Same Title"
1970 UK DAWN DNLS3010
(Folk Rock)

RARE:★★★★★

Member :

Roy Apps(g,key,vo), Tony Pook(vo),
Gerald T. Moore(key,manndolin,harmonica,vo),
Stephen Jones(key,vo,accordion)


Side (A)
1. Yellow Roses
2. Car Crash
3. Harlequin 2
4. Smiling Ladies
5. Little Boy
6. Sally Goodin
7. Upon Reflection


Side (B)
1. Lord & Master
2. Little Angel
3. Goodbye
4. For You
5. Sally Goodin
6. Carnival & Penitence


屋外でピクニックなどされる計画がある方にまずお勧めしたい一枚です。

ブリティッシュ・フォークと言えば、美しいフィメール・ヴォーカルだけ が魅力だと頭から決め付けてこの世界に入ってきた私は、そもそも イギリスのフォーク音楽自体を甘くみていた訳でして、このアルバムは そんな私のフォークに対する偏見を覆してくれました。フォークは トラッドやクリスチャン・フォークだけではありません。ブリティッ シュ・ハード・ロックと同じくらい奥が深いのです。

さて、そんなヘロンは、この1stと2枚組みの2ndの2枚のアルバムを 発表していますが、どちらも甲乙つけがたい素晴らしい内容です。

驚いたことに、レコーディングが屋外でされたという話なのですが、この デビュー・アルバムの裏ジャケにはその光景の写真が掲載されています。 あたかもピクニックの途中で思いついたので楽器を手に演奏してみました、 みたいな雰囲気です。食材を始め、ワインでも自然食品が見直されてきて いる昨今、『オーガニック』なんて言葉をよく聞きますが、このグループ の音楽こそまさしく『オーガニック』!

構成はギターと男性ヴォーカルのハーモニーというごくごくシンプルな ものですが、美しく、せつなく、優しく、暖かく、そして本当は深い、 そんな音楽です。イントロの一音だけでもとてつもなくイマジネーション をかきたてられる、不思議な作品です。

のんびりとあまり難しいこと考えずに演奏してみました風でいながらも 実は絶妙に計算されつくしたのではないかと思うほど、決してエアコンで は味わえない自然な風の素晴らしさのようなものを感じます。それで いながら雑念としていないという、大自然が生み出した奇跡という 感じです。

どの曲も魂にストレートに響いてきます。しかも聴きこまなくても自然に しみわたってくるところが凄いと思います。その上聴けば聴くほどに 素晴らしさが増してくるので、どんどん人気が出ているのもうなずける ところです。

何でもジャンルにカテゴライズしがちな我々日本人は、『これはフォーク、 これはプログレ』と定義してから聴く傾向にあるように感じますが、 そういうことから解放されて『音楽』として楽しむべきだと思います。 (そういう意味ではジミヘンの後にヘロンを聴くのもありかも・・?) パンク・ロックとは対極に位置していますが、何歳になってもずっと 聴いていられるのはこちらかな。

キャンプ・ファイアーのために薪を集めたり、飯盒炊爨(はんごう すいさん)の準備なんかをしながら、お聴き頂ければとてもよろしい のではないでしょうか。


(2007.07.10)