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第288回 MARIA BARTON "Rainful Days"

MARIA BARTON - "Rainful Days"
1980 UK-AIRSHIP AP56
(Folk Rock)

RARE:★★★★★★★

Member :

Maria Barton(vo,g)


Side (A)
1. Rainful Days
2. On Board "The Victory"
3. One Time I Went To Holland
4. Don't You Cry No More
5. Sometimes
6. Turing The Tide-Tune


Side (B)
1. Moving In, Moving On
2. When I'm A Spaceman
3. Here I Go Again
4. If You Loved Man
5. For You
6. When The Credits Roll


マイナー・レーベルのエアーシップからひっそりと出された英国 フィメール・フォーク、幻の名盤です。

英国フォークとはいえ、トラッド色はほとんどない作品で、静かな アコーステック・ギター1本をバックに、ヴァシティ・バニヤン級の 儚くも美しい歌声が淡々と、そして切々と歌い上げていく奥ゆかしい 作品で、フィメール・フォークと『雨』というのはなぜこんなにも ぴったりくるんだろう、とまずはそんな印象を受けます。

『雨の日』というタイトル通り、「ああ今日はマリンスタジアム(また それか)も中止か。。」と恨めしい気分で外を眺めている雨の日曜の朝。 そんなときに聴くと完璧です。雨露が滴り落ちていくさまをぼんやり 見つめながらこんな作品を聴けば、時間を忘れてボーっとできます。

乱高下する日経平均、暗躍するオイルマネー、あの人が次の部長だの、 上司が悪いからやってられるかだの、電車の座席が混んでいるからもっと 詰めろよとか、そんなものとはまったくの無縁の世界が広がっています。

音的には同じ英国女性フォークでも、ブリジット・セント・ジョン (BRIDGET ST.JOHN)の1stなどに比べると全然地味です。「似ている」と いう意味ではヴァシティに一番近い音と言った方がやはり一番わかり やすいのでしょうけれど、あれをもっともっとシリアス系にした感じで、 渋いハスキー・ボイスのせいなのか、歌メロもいいので、表面的な印象の 『地味』さだけではなく、『大人の落ち着き』とでも言うのか、本質的に はこちらの方が『華やか地味(?)』なのです。

歌声とギターだけでしかも音数は本当に最小限です。それなのに何回でも 飽きずに聴ける、つまり、シンプルな音というのが、真実に一番近い、 とい結論に至るのでしょうか。疲れているときに聴いたら、スグに寝て しまいますけど・・・。(それはそれで最高です。)

フォーク・ファンだけでなく、音楽のさらに深い部分に魅力を感じられて いる方には必聴だと思います。オランダのマックリール(MACREEL)などと 同じくらいの感動が待っています。

どこでもありそうでどこにもない一枚です。


(2008.09.30)