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第284回 ZAKARRIAS "Same Title"

ZAKARRIAS - "Same Title"
1971 UK-DERAM SML1091
(Progressive Rock)

RARE:★★★★★★★★

Member :

Zakarrias(vo,g,b,kazoo), Martin Harrison(ds),
Peter Robinson(key), Geoff Leigh(sax,flute), Don Gould(key)


Side (A)
1. Country Out Of Reach
2. Who Gave You Love
3. Never Reachin'
4. The Unknown Years


Side (B)
1. Sunny Side
2. Spring Of Fate
3. Let Us Change
4. Don't Cry
5. Csmic Bride



ハード・ロックのような、フォークのような、サイケのような・・・、一言では言い表せない摩訶不思議な作品です。

水準としてはブリティッシュ・メール・ヴォーカルものとしては最高の内容で、このアングラ然とした素敵なジャケットもその神秘性に拍車を かけています。

クォーターマス(QUATERMASS)ピーター・ロビンソン(Peter Robinson)も参加しているらしいですが、もうそんなことはどうでもよく なってしまうくらいアクの強いその内容はといえば、全編にわたる 不思議なベース・ラインとアコギの不思議なコントラストの上に、 ガラガラヘビのように乾いたヴォーカルが絡みつき、そこにやたらと 重くてパンチの効いたドラムスが切り込んでくる、そんな異様な光景が 繰り広げられている感じです。但し歌メロが極端に良いので、2、3回 聴いただけで、妙なハマり方をしてしまいがちです。

思うに、所謂『クスリ』なんかをやりながら音楽を聴くという状況がアリアリだった当時に於いて、このサウンドは、最高の恍惚感引き出したのではないでしょうか。

まずはA-1の強烈インパクトが大地を揺るがします。

ある意味、アルバムの中では異色の曲ではありますがクリーム(CREAM)ジャック・ブルース(Jack Bruce)が命乞いしそうな異常に重たい 金属質のベースの迫力がすごく、門外漢と思って油断していたヘヴィ・ロック・ファンを一気に振り向かせることができる強烈なリズム・セクションです。

山伏が鬼気迫りながら一心不乱にお経を唱えているような、神秘性と圧倒的な迫力の両立です。ベース・ラインはアナコンダのようにからみ ついてきます。更にエンディングが最高にカッコいい!!

続くA-2のベースも極太。相変わらずドラムスは重量級で暗黒のベース・ラインと灼熱のキーボードが複雑に絡み合う妙な展開に目がくらみます。 サビでアコギが入ってきて転調するあたりの、この独特の世界が彼らの真骨頂だと思います。

A-2以降も更にこの路線でいくのかと思いきや、全然雰囲気の違う展開を見せ、初めて聴いたときは、「なんてまとまりのない作品・・」と 思ったものですが、聴き込む程に自然な流れに感じてくるから不思議です。

B面になると更に不思議な感じになってきます。

白昼夢をみているようなB-1は、暗闇で熱病にうなされているようなわけのわからない世界です。とは言っても決して前衛的な感じでは ないので、誤解しないで頂ければと思います。(念のため)

とにかく、ピアノの調べの美しい曲が入っていたり、かと思うと、テイスト(TASTE)ばりのへヴィなリズムにサックスが割って入り、 あげくはイタリアン・プログレのようなストリングスが吹き荒れるような曲もあり、それでいて、とっちらかった感じには決してならず、全体が 絶妙に絡み合っている感じは、アクアパッツァか酸辛湯、はたまたキムチチゲ・・・、お皿に残った最後の一滴まで堪能できます。

既成概念を全て捨て去って作られたこの作品の名盤の域に達している完成度は、数あるブリティッシュ・ロックを聴き続けた耳の肥えた人をも うならせることのできる、まさに幻の逸品です!


(2008.05.30)