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第274回 MARC BRIERLEY "Welcome To The Citadel"

MARC BRIERLEY - "Welcome To The Citadel"
1968 UK-CBS S63478
(Folk Rock)

RARE:★★★★★★

Member :

Marc Brierley(g,vo), Henry Lowther(trampet,violin),
Tony Reeves(b), Mike Travis(ds), Clare Lowther(cello)


Side (A)
1. The Answer Is
2. Vagabond Of Sleep
3. Matchbox Man
4. Over The Hills
5. Symphony
6. Take Me For A Ride On Your Aeroplane
7. Welcome To The Citadel


Side (B)
1. Hold On, Hold On, The Garden Sure Looks
2. Autograph Of Time
3. Sunlight Sleepers Song
4. Making Love
5. Time Itself
6. And Who Would But Think
7. Thoughts & Sounds


ブリティッシュ・フォークというと我が国日本ではフィメールものばかり がもてはやされているようですが、真髄を究めていくと男性ヴォーカルに こそ真実があるのかもしれません。

・・と、大上段に構えてしまいましたが、そんな気分にさせられて しまう魅力がこのアルバムには秘められています。

この手の内省的フォーク作品としては、ニック・ドレイク(NICK DRAKE) あたりと共通点は感じるものの、自殺寸前の張りつめた雰囲気の ドレイクに対して、こちらはもっと生へのエネルギーが感じられ、 また音的にはサイケ色が強い感じです。ドレイク程の悲壮感がない分、 こちらの方が聴きやすいという気もします。

爪弾き系ギターに心を奪われたことのある貴兄なら絶対に気に入るで あろう、A-1は白眉の出来。調弦のような奥ゆかしい出だしは爪弾き系 ギター曲の中でも世界で5指に入るできと言っていいでしょう。 由緒正しい血筋を持つかのようなジェントルな歌声に、くすんだ ストリングスがからんでくると、そこは一気に王宮要塞の世界。 ダンカン・ブラウン(DUNCAN BROWNE)の例の傑作アルバムをも凌ぐ 圧倒的な吟遊色です!!!

ここから、ややアップテンポなA-2を得てA-3辺りまでくると曲はより 白昼夢色が強くなり、くすんだ花畑で蝶々が待っている中を スローモーションのように追いかけている遠い昔の自分を遠くから 眺めているような幻想的で頽廃的なムードが圧巻で、思わずシエスタを とりたくなってきます。

どの曲にも言えることですが、ギターの音色が夢見心地なので、行水の 後の真夏の夕方あたりに聴ければ、その日の夜の生ビールの味は 保証付きです。ただ、いまどき『ぎょうずい』をする人がいるのか どうかは疑問ですが。

B面は後半に進むにつれ、シリアス色が強くなり、ウェットな ストリングスが涙腺を直撃するB-5で漂う儚さは半端ではなくなり、 コートの襟(ポロシャツの襟ではありません!)をたてて、木枯らしの 中を歩いているかのようです。

そしてB面ラストのエンディングにはA-1のあのメロディが静かに流れ、 針は幸福の時に終わりを告げるのでありました。

(2008.01.10)