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第273回 AUDIENCE "Friend's, Friend's, Friend"

AUDIENCE - "Friends Friends Friend"
1970 UK-CHARISMA CAS1012
(Progressive Rock)

RARE:★★

Member :

Howard Werth(g,banjo,vo), Keith Gemmell(sax,woodwind),
Tony Connor(ds,key), Trevor Williams(b,vo)


Side (A)
1. Nothing You Do
2. Belladonna Moonshine
3. It Brings A Tear
4. Raid


Side (B)
1. Right On Their Side
2. Ebony Variations
3. Priestess
4. Friend's, Friend's, Friend


どちらかと言えばマイナーであろうこのオーディエンスなんかを聴くと、70年代ブリティッシュ・ロックの底力を見せつけられた気分になります。とにかくこの時代は奥が深く層が厚い!

この作品は2ndに当たりますが、ここで披露してくれるのは、一言では言い表せない不思議なサウンドで、一聴した限りでは、ジェスロ・タルJETHRO TULLイアン・アンダースンIan Anderson)を思わせるダミ声のヴォーカルがいかにも日本人に敬遠されそうなのに、聴けば聴くほどにその奥深さに引き込まれる、そんな作品です。

ジャケット通りの牧歌的な部分がベースのようでいながら、アングラ ならではの妙な質感と暗さは、もうこの時期のイギリスでしか生み出さ れなかったであろうと断言できるものです。
他のグループがどんなに頑張ってコピーしても出せない特別の雰囲気が全体に漂っています。

ところどころ明るい感じの展開も見せてくれますが、それでも決して軽くはならないあたりは、耳年増のプログレ・ファンを腹の底から唸らせるものでしょう。

A-1の石に躓いたようなイントロに『なんじゃ〜?こりゃ!もっと カッコイイのにしておくれよ・・』と、言いたくなりますが、その辺りはハイ・タイドHIGH TIDEの2nd同様、イントロでカッコつけなくても曲は十分凄いんだぞ、というお手本のような作品なのです。

真夜中の暗闇で鳴り響くかのような暗黒のベース・ライン。
そして、冷たい夜風のごときアコースティック・ギター!

全てが一体化しています。

更に、その暗黒に差し込む光が、まるで青白い炎のようで、ブラスをバックに淡々と歌いあげる妙なムードは一度ハマったら抜け出せません。
曲が進行するにつれ、どんどん不気味さを増していき、ブラスとフルート、そしてそれにアコースティック・ギターが絡みつく展開は、かのキャタピラCATAPILLAに匹敵するテンションです。

『プログレ』に括られはしますが、ヘヴィなリズムは、ハード・ロック・ファンにも全く問題なく受け入れられる事と思います。

B面もアングラです。気持ちいいくらいアングラです。コード進行が独特なのか、本当にジャケット通りの迷宮に脱帽です。

(2007.12.20)