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第246回 FUZZY DUCK "Same Title"

FUZZY DUCK - "Same Title"
1971 UK MAM AS1005
(Hard Rock)

RARE:★★★★★★★★★

Member :

Paul Francis(ds), Mick (Doc) Hawksworth(b,vo),
Roy (Daze) Sharland(key), Graham White(g,vo)


Side (A)
1. Time Will Be Your Doctor
2. Mrs. Prout
3. Just Look Around You
4. Afternoon Out
5. Double Time Woman
6. Big Brass Band


Side (B)
1. More Than I Am
2. Country Boy
3. In Our Time
4. A Word From Big D
5. One More Hour
6. No Name Face



ファジー・ダックってどんなダックだ?』と突っ込みを入れた方は 相当多いのではないかと思いますが、ブリティッシュ・ハード・ロック界 伝説の名グループ、アンドロメダANDROMEDAのベーシスト、ミック・ ホークスワース(Mick Hawksworth)が参加している為、アトミック・ ルースターATOMIC ROOSTERファミリーの作品としてよく紹介される マニアライクな一枚です。

アンドロメダで変則的かつ個性的なベースを弾いていたミック・ホークスワースのプレイはここでも健在で、より前面に出てきています。

このバンドのもうひとつの特徴はドライヴ感の溢れるオルガンで、これがまた全般にわたって大活躍!更にサビになると英国的ヴォーカルが、 いい味を出すと、泣き泣きギターが絡んでくるという、力みすぎて手の平がびしょびしょになること間違いなしのアルバムなのです。

プレイヤーそれぞれがテクニシャンであるため、『好き勝手に演奏しているような感じ』で、そう書いてしまうと、まとまりがないような 印象になりますが、これが意外にも全体としては整合感が保たれている不思議なバンドです。

変則ベースなんて、『おい、どこ行った!?』と呼びたくなるような、どこに行っているのかわからない状態で、オルガンとギターはサビになる と人が変わったように暴れ出し、ベースに負けじとドラムスもひそかに変則的。そんな中でもヴォーカルだけがたんたんと切々と粛々と延々と、 哀愁たっぷりに歌い上げてくれて、それが極上のソースのようで、またいい味なのです。

演奏だけでなく、曲そのものも良く、A-1出だしのドラムスのきざみを聴いただけで、恐らく玄人でも、『おっ!』と一目置く展開です。 変則的でテクニカルなリズムは、まるで、テンポを外して動きが遅れ、隣と向き合ってしまってちょっと気まずくなる難しいエアロビクスの クラスを思い出させます。

A面は、曲が進行していくにしたがっていい意味でだんだんと煮詰まっていく感じは、時間をかけて煮込んだスープがもう旨いのなんのっていう、 そんなイメージで、野菜のエキスと肉汁が鍋の中いっぱいにあふれ出てきます。

B面も後半に差し掛かると、ここまで地味に控えてきたドラムスとギターがどんどん凶暴になってきます。ドラムスのオカズはもうかっこよさの極致。 ハード・スタッフHARD STUFF程の破壊力はありませんが、レベル(なんの?)はこっちのが高いと思います。

そしてB面ラストでヴォーカルとして遂にダックも登場!(本当です)

多分この人がファジー・ダックです。急にセサミ・ストリートのような雰囲気になります。ここまで玄人をうならせてきたのに、ここにきて なんだこれは?『ふざけるな、コノヤロー(猪木風)』と言いたいのをぐっとこらえて聴いていると、だんだん哀愁オルガンが優勢になり、 いい感じで幕を閉じます。目を閉じるとなんとも言えない余韻が残ります。

そして目を開け、改めてジャケットを見て再び、『ふざけるな、コノヤロー!』(猪木風)と言って締め括って頂きたいものです。


(2007.03.10)