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第240回 ATOMIC ROOSTER "Nice 'N' Greasy"

ATOMIC ROOSTER - "Nice 'N' Greasy"
1973 UK DAWN DNLS3049
(Heavy Progressive Rock)

RARE:★★★★★★

Member :

Vincent Crane(key), Chris Farlowe(vo),
Johnny Mandala(g), Rick Parnell(ds)


Side (A)
1. All Across The Country
2. Save Me
3. Voodoo In You
4. Goodbye Planet Earth


Side (B)
1. Take One Toke
2. Can't Find A Reason
3. Ear In The Snow
4. Satans Wheel



B&Cレーベル、ペガサスレーベル時代の初期三部作出来があまりにも突出し過ぎている為、そちらにばかり興味が集中しがちなアトミック・ ルースターですが、ドーン・レーベルへ移ってからの2作品も決して捨てたものではなく、別のグループとしてみればかなりの水準の作品を 発表しています。

3rdアルバム発表後、リーダーであるキーボード奏者ヴィンセント・クレイン以外のメンバーが全員脱退してしまうという、まるでちょっと前の全日本プロレスノアのような事態となり、新たなメンバーに、 伝説のハードロック・グループ、ホースHORSEからリック・パーネルを、そしてコロシアムCOLOSSEUMからはブリティッシュ・ロック界最強の ソウル・ヴォーカリスト、クリス・ファーロウを向かいいれて新たな第一歩を踏み出します。

リック・パーネルというブルース色の強いドラマーに加え、このクリス・ファーロウという人の声の黒さは半端ではなく、大きな メンバー交代というよりもむしろ新グループにヴィンセント・クレインが参加したという見方をした方が良いのかもしれません。

ここで紹介するアルバムはこのラインナップでの2作目にあたるもので、サックスまで導入されていることから、買った当時は私もかなり抵抗感を 持っていたのですが、こういう『派手さには欠けるけど渋い作品』は、逆に『いつまでも聴ける』ものではないでしょうか。

1stアルバムに入っていた名曲『13日の金曜日Friday The 13th)』のカバー版A2なんて、ハード・ロック一辺倒の若い人には理解しにくい かとは思いますが、長年ブリティッシュ・ロックを聴き続けてきたオッサンにこそ聴いて欲しい、深い一曲だと思います。

そして個人的に一番気に入っているB-2のバラッドは極上!

今まで長年かけて培ってきたクリス・ファーロウの円熟のヴォーカルが見事に結実し、バラッドたるものこうあるべきと断言したくなるくらいの 深い素晴らしさです。

それに負けじと響き渡るクレインのピアノ・プレイの深さと、プロコル・ハルムPROCOL HARUMさえも真っ青になる程のリリシズムは、絶対に 他の誰にもカバーできない仕上がりです。

秋の昼下がりに英国紅茶なんぞ口にして、ゆるりと人生の機微なんかを感じながら聴けば最高の瞬間が訪れることをお約束致します。 会社を定年したときにはこういう曲で人生を振り返ってみたいものだな、と思います。この一曲だけのためにも買う価値のあるアルバムです。

(2007.01.10)