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第238回 ARTI & MESTIERI "Tilt"

ARTI & MESTIERI - "Tilt"
1974 ITALY CRAMP CRSLP5501
(Progressive Rock)

RARE:★★★★★

Member :

Furio Chirico(ds), Beppe Crovella(key),
Marco Gallesi(b), Gigi Venegoni(g),
Giovanni Vigliar(violin,vo), Arturo Vitale(sax))


Side (A)
1. Gravita 9,81
2. Strips
3. Corrosione
4. Positivo/Negativo
5. In Cammino


Side (B)
1. Farenheit
2. Articolazioni
3. Tilt


イタリアン・ジャズ・プログレの最高峰、アルティ・エ・メスティエーリのデビュー・アルバムです。いやイタリアだけではなくジャズ・ロック としても世界レベルでトップ・クラスの内容なのではないでしょうか。

イタリアを代表する超絶ドラマー、フリオ・キリコトリップTRIP)解散後に結成した、文字通り芸術的超絶集団です。

A面は、スピーディなヴァイオリンで幕を開け、ゆるやかな調べが続くと、後はもう一気呵成。キーボードとヴァイオリンの印象的なリフレインが実に素晴らしく、そして音圧も十分すぎるくらい分厚いです。

とはいえやはり圧巻はドラムスで、映像を見たら恐らく『手とスティックが見えないな、こりゃ、』と言ってしまうであろうという位の凄い音を しています。映像無しに初めて出会った場合は『このグループのドラムって2人だっけ?』と思ってしまう事でしょう。かのジョン・ハイズマンJohn Hisemanもかくや、というくらいの凄腕です。

曲目はクレジット上では分かれてはいますが、どちらかというとA面1曲っていう感じの構成なので、メンバー全員が一丸となって延々と暴れまわった後に、突然登場するヴォーカルの調べが異常に瑞々しく、また妙に生々しいのです。目を覚ましたらそこは初夏の山小屋だった、 みたいなさわやかさで、ウィスパー系の歌い方も絶妙です。

更にそのバックにメロトロンが流れ出した日にゃ、あんた!!

ここでのアコースティック・ギターの調べが瑞々しさに拍車をかけていて、果実を一かじりするときのような感動を味わえます。ヴォーカルの ゆるやかな流れの後にはまた超絶演奏の大嵐ですね。

B面は、これまたゆるやかに立ち上がると思いきや、後半は超速です。音が切れないドラムスに『すっげー!』って感心していると今度は 叙情派メロトロンがやってきて、『もう勘弁して下さい』って感じです。

演奏が凄いだけなら聴き飽きてしまうのかもしれませんが、このアルバムは静かな部分と激しい部分が適度にメリハリつけて展開するため、 何回でも聴きたくなる作品です。

この後彼らは2ndを発表。演奏レベル的には更に進化していてもっと超速となりますが、静かな部分が後退している分マニア色は強くなっている ように思います。

まあ、まずは1stを。


(2006.12.10)