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第274回 MARC BRIERLEY "Welcome To The Citadel" |
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MARC BRIERLEY - "Welcome To The Citadel" |
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RARE度:★★★★★★ |
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Member : |
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Marc Brierley(g,vo), Henry Lowther(trampet,violin), |
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Side (B) |
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ブリティッシュ・フォークというと我が国日本ではフィメールものばかり がもてはやされているようですが、真髄を究めていくと男性ヴォーカルに こそ真実があるのかもしれません。 ・・と、大上段に構えてしまいましたが、そんな気分にさせられて しまう魅力がこのアルバムには秘められています。 この手の内省的フォーク作品としては、ニック・ドレイク(NICK DRAKE) あたりと共通点は感じるものの、自殺寸前の張りつめた雰囲気の ドレイクに対して、こちらはもっと生へのエネルギーが感じられ、 また音的にはサイケ色が強い感じです。ドレイク程の悲壮感がない分、 こちらの方が聴きやすいという気もします。 爪弾き系ギターに心を奪われたことのある貴兄なら絶対に気に入るで あろう、A-1は白眉の出来。調弦のような奥ゆかしい出だしは爪弾き系 ギター曲の中でも世界で5指に入るできと言っていいでしょう。 由緒正しい血筋を持つかのようなジェントルな歌声に、くすんだ ストリングスがからんでくると、そこは一気に王宮要塞の世界。 ダンカン・ブラウン(DUNCAN BROWNE)の例の傑作アルバムをも凌ぐ 圧倒的な吟遊色です!!! ここから、ややアップテンポなA-2を得てA-3辺りまでくると曲はより 白昼夢色が強くなり、くすんだ花畑で蝶々が待っている中を スローモーションのように追いかけている遠い昔の自分を遠くから 眺めているような幻想的で頽廃的なムードが圧巻で、思わずシエスタを とりたくなってきます。 どの曲にも言えることですが、ギターの音色が夢見心地なので、行水の 後の真夏の夕方あたりに聴ければ、その日の夜の生ビールの味は 保証付きです。ただ、いまどき『ぎょうずい』をする人がいるのか どうかは疑問ですが。 B面は後半に進むにつれ、シリアス色が強くなり、ウェットな ストリングスが涙腺を直撃するB-5で漂う儚さは半端ではなくなり、 コートの襟(ポロシャツの襟ではありません!)をたてて、木枯らしの 中を歩いているかのようです。 そしてB面ラストのエンディングにはA-1のあのメロディが静かに流れ、 針は幸福の時に終わりを告げるのでありました。 (2008.01.10) |