BACK TO HOME | ||
第254回 MANDY MORTON & SPRIGUNS "Magic Lady" |
||
|
MANDY MORTON & SPRIGUNS - "Magic Lady" |
|
RARE度:★★★★★★★★★★ |
||
Member : |
||
Mandy Morton(vo,g), Tom Ling(violin, harpcicord), |
||
|
Side (B) |
|
どうでしょうか、このA-1の出だしは!? しっとりと京都祇園の裏道を歩いているような奥ゆかしい調べから一気に きます。壮大です。のけぞるような躍動感。数あるブリティッシュ・ フォークの中でも指折りの至福の瞬間と言っても過言ではありません。 こんな曲を流しながら、渋滞していない真鶴道路を駆け抜けたら、 どれだけ気持ちがいい事でしょう。(渋滞の時しか知らないんです。 あの道・・・) そうは言っても決して明るくなりすぎず、アルバム全般はむしろウェット でクール、時にあたたかいというブリティッシュ・フォークの理想的な 展開をします。夏の終わりに縁側でわらび餅を食べながら聴いたりすると 存外いいかも知れません。黒魔術系のジャケットだけを見るとちょっと キワモノな音を想像してしまいますが、ジャケと中身は全然違います。 さてご紹介が遅れましたが、本作はブリティッシュ・フォーク屈指の 女性ヴォーカリスト、マンディ・モートンを擁するスプリガンスの 最終作にして最高傑作です。78年に事故で亡くなったサンディ・デニー (Sandy Denny)を追悼し、彼女に捧げるアルバムとして急遽タイトルを 変更したと聞きます。 1975年に発表の、スプリガンス・オブ・トルガス(SPRIGUNS OF TOLGUS) というブリティッシュ・フォークの名義で出したアルバムは、今では、 英国屈指の激レア盤として有名ですが、その後、『スプリガンス』として、 3枚の作品を残しています。 余談ですが、『スプリガンス・オブ・トルガス』の1枚は、コアな ブリティッシュ・フォーク・マニアが破顔してしまうような内容で、言い 換えれば、コアなマニアにしかわからないとも言えるミステリアスな 雰囲気漂う作品です。もしかしたら、一般の人には『どこがいいの?』と いった印象しか与えかねない内容であったとしても、幾多の戦場(?)を くぐり抜けてきた歴戦のコレクターには号泣モノの内容なのです。 さて、その後、スプリガンス名義になってからはぐんとプログレ色が強くなりますので、プログレ系の人も含めてブリティッシュ・ロックの ファンには広く推薦できる王道的内容と進化(?)します。 魅力のひとつはなんと言ってもマンディ・モートンのヴォーカル。 彼女の場合、その辺の天上のフィメール・ヴォーカルとは違い、天賦の才能とでもいうべき、生まれながらの味わいを持っています。 しかも美しいだけでなくカッコイイのです!!(私としては、クイーン・ エメラルダスの持つカッコよさに通じるものがあると思っています。) サンディ・デニーとの類似性を取沙汰される事も多いのですが、よく聴くと微妙に違いがあって、例えて言うなら、暖房の切れた事務所で 徹夜しているときに、毛布をくれるような深い暖かさのあるサンディに対し、こちらは、あまりに強すぎるので思い切ってエアコンを切って しまい、窓を明けて外に出て打ち水をしてみました、みたいなクールさと無邪気さを持ち合わせているのです。わかりますか?(わかるかっ!) スプリガンスの作品は、どれも素晴らしいのですが、やはりこの3rdの出来は白眉です。大地の広がりを強く感じる、ナスカ平原の上空を ゆったりと羽ばたいて飛んでいるような実にスケールの大きな作品です。 畳の上で聴いていてはその良さが伝わってこないようなトラッド色は薄いので、日本人向きだと思います。 ちなみに、オリジナル・アルバムの初回20枚は盤が青いという、これまた凝ったことになっています。 (2007.05.30) |