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第235回 COBBLERS LAST "Boot In The Door" |
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COBBLERS LAST - "Boot In The Door" |
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RARE度:★★★★★★★★★★ |
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Member : |
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John Pethica(fiddle,accordion,bouzouki,b), |
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Side (B) |
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ハード・ロックに較べれば、強い個性を感じさせてくれる作品が少ないと いう印象は確かにあるのですが、素晴らしい作品が多い割に、ブリティッシュ・フィメール・フォークは、「どれも同じように 聴こえる」などと言われる事があるのですが、今回紹介するグループの 突出したフィメール・ヴォーカルには強いオリジナリティを感じさせる ものがあります。 フィメール・フォークの必須条件である『癒し系の要素』が含まれて いない、言わば単なる『フォーク』となると私も個人的にかなり辛いのですが、この作品はそれに加えて他にはマネのできない位の『せつなさ』が アルバム全体を支配しています。 『せつなさ』の理由は女性ヴォーカルの天上&泣きそうな歌声による ところが大きいのですが、バックのアイリッシュ・ムード満点のツボを 得た絶品の演奏がさらにそれを引き立たせます。 A-1の出だしの、せつなくもはかない歌声のなんと素晴らしいことか! アイルランドの歌姫、ケイ・マッカーシー(Kay McCarthy)と比肩しうる 素晴らしいせつなさ(なんじゃそりゃ)で、バッキングの哀愁も最高水準 のもの。のどあめの宣伝にでも使ってあげたいくらい透明感の強い 歌声です。 さらに追い討ちをかけるようにせつないのがA-5で、これのイントロで 涙腺に異常をきたさない人がいるのだろうか、ってくらいのものです。 それに導かれて聴くメロディは、恐らく誰もがどこかで耳にしたものだと思うのですが、まるで勝どきをあげて大騒ぎをする海賊どもの酒宴の興奮がいよいよ絶頂へと向かって行くかのような臨場感すら覚えます。 そして男どもの騒ぎがおさまると、今度は酒盛りの後の後片付けをしているかのように最後はまた彼女の歌声でエンディングです。 B面はさらにもの悲しげで、エンディングのタイトルナンバーはなんとも 言えないアイリッシュ・ムード満点の流麗な雰囲気で幕を閉じます。 ひとりしきり演奏し終わった人たちが山に帰っていくような、軽快な中に も寂しさを含んだ奥の深い1曲です。 誰が聴いても本当に美しいと感動するレベルだと私は思うのですが、 フォークは全部同じように聴こえるなどとおっしゃる一般の方々(?) にも是非味わって頂きたいセツナサですね。 . (2006.11.10) |