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第233回 DRAGONFLY "Same Title" |
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DRAGONFLY - "Same Title" |
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RARE度:★★★★ |
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Member : |
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Markus Husi(key), Marcel Ege(g), Klaus Moennig(b,vo), |
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Side (B) |
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1980年代初頭に一部で静かなブームとなったヨーロピアン・シンフォニック・ロックです。 北欧、ドイツ等70年代にはそれほど注目を浴びていなかった国々から、シンフォニック・ロック・グループが数多くレコードをリリースし、当時日本でもプログレ専門店で取り扱われ、90年代には結構盛り上がって いたように感じます。 シンフォニック・ロックという定義自体がなんなのか?という話もありますが、私なりの解釈では「やや新しめの楽器を使ってキーボード 中心にテクニカルに展開、曲は叙情的なメロディ中心」というふうにとらえています。プログレに較べるとメロウというか甘い感じが強いなという印象ですね。 80年代に出てきたシンフォニック・ロック・グループは本当に数多くあり、質的には「ちょっと、おっさん頼むわ〜!」みたいなレベルのレコードも あったりと、はっきり言って玉石混合。 ドイツあたりの「ジェネシス(GENESIS)タイプ」なんていうグループにはろくなものがなく、そういうのを聴く位ならレベッカでも聴いていた方がよっぽどマシじゃねえか!とさえ思っています。 (ノッコ、ごめんなさい…。) ここで紹介するドラゴンフライというスイス出身のグループは『石』ではなくまちがいなく『玉』と言い切れます。そしておそらくこれが唯一の作品だと思います。 A面は4曲構成で、全て平均点以上の出来栄えでややハードな面も見せながら複雑に展開するものには非凡なものを感じさせてくれ、どれも結構よく練られてるな、という印象です。 とはいえやはりこのアルバムの最大の見所はB面全部を費やしたタイトル・ナンバーならぬグループ・ナンバー。これは本当に素晴らしい。 イタリアのレアーレ・アカデミア・デ・ムジカ(REALE ACCADEMIA DI MUSICA)の例の曲に匹敵する出来栄えです。夏休みに避暑地に行って、 ふと隠れ家的に見つけた観光客がほとんどいない湖の中をゆったりと泳いでいるような異常な瑞々しさに満ち溢れています。 全体を支配しているピアノの転がりは清涼感に満ち溢れていて、しかしその割に決して軽薄にはなっておらず、あくまでシリアス。と言って 暗いわけでもなく、優しい陽光が差し込んでくるようなメロディが全体を支配しています。大河の下流のように実にゆったりと時間が流れていきます。 土曜の午後に日当たりの良い窓辺で横たわって聴ければうたたね必至。カセットテープに録音してリピート・モード(古いですか?)で何回も 聴きながら眠りに落ちていく瞬間は何物にも代えがたく、「お願いだから今日は宅急便来ないでくれ」状態です。 奥ゆかしいヴォーカルも魅力的で、サビで「ヘックショーンッ」(なんかこう書くと台無しですがホントです)といってその後一瞬ブレイクする所 は鳥肌必至です。そしてその後再び滑り出すウイスパー系のヴォーカルのところで思わずいっしょに唄っている自分がいました。 ジャケもアルバムの内容を見事に表している秀逸なものです。フォーク系の方々や広く一般の方々にも聴いて頂きたいスイスを代表する傑作です。 (2006.10.20) |