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第206回 HIGH TIDE "Same Title" |
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HIGH TIDE - "Same Title" |
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RARE度:★★★★★★ |
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Member : |
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Tony Hill(g,vo), Simon House(violin,key), |
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Side (B) |
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1stアルバムで世界中のハードロックファンを恐怖のどん底に陥れた伝説のグループ、ハイ・タイド(HIGH TIDE)。結局20世紀のロックアルバムには、彼らの1stアルバムを超えるヘヴィな作品は遂に出現することはありませんでした。 今日ご紹介する2ndアルバムは、なんとなく安易な感じのアルバム・ジャケットからして、1stには及ばないんだろうななんて印象を持ちますが、実際に聴いてみると、衝撃/インパクトでは1stに軍配があがるものの、 内容的には甲乙つけ難い仕上がりになっています。 アルティメットでジェラルド・ゴルドーが四つんばいの相手の顔面を容赦なく蹴りつけているような感じの1stアルバムに対し、相手を傷つけることなく美しく(あくまでも美しくです)腕ひしぎ十字固めを 決めているような感じなのが、この2ndアルバムです。 殺戮一辺倒だった1stと較べると、楽器編成、担当、音色は全く同じながらも、もっともっと音楽を追求した感じで、殺戮の中にも美的な感覚が混ざっているそのバランスが素晴らしく、A面2曲、B面1曲という 大作志向はプログレファン、ハードロックファンのどちらにも強く推薦できる構成です。イメージ的にはブラック・サバス(BLACK SABBATH)の4枚目に相通ずるところがあります。 3曲のどれもが、『さあ、始まります!』って感じのイントロではなく、だらだらとチューニングをしているような感じで始まるのですが、曲が 進行し、転調を塗り重ねていくうちにどんどんその魅力に引きずり込まれていく…そんな自然な流れは、まるで平田オリザ演劇のように偶然的であって作為的、どこまでが作り手の意図でどこまでがアドリブ なのかが全く想像のつかない深い深い作品なのです。 そしてこのトニー・ヒル(TONY HILL)先生は雷鳴の如きギターの腕前も去ることながら、威風堂々としたヴォーカルが素晴らしいのです。イギリスのホース(HORSE)やスイスのトウド(TOAD)のヴォーカルのような威厳に満ちており、歌いだした瞬間、全員がひれ伏してしまうほどのものです。 そこにあの甘酢煮系のヴァイオリンが絡んでくるんですから、これはもう英国ロックファンにとっては贅沢の極みですね。第一印象の衝撃が少ない分、末永く聴くことのできる作品だと思います。 (2006.1.10) |