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第157回 J.E.T. "Fede,Speranza,Carita" |
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J.E.T. - "Fede,Speranza,Carita" |
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RARE度:★★★★★★★★★★ |
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Member : |
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Piero Cassano(key), Pucci Cochis(ds), "Bimbo" Marrale(g), |
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Side (B) |
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その変形ジャケットとともにイタリアン・プログレの幻として有名な一枚。 プログレの中でも、イギリスのユーライア・ヒープあたりとの類似性も指摘されたりと、「ハード系プログレ」として紹介されることも多いようですが、それは間違いで、本質的にはもっと深いところで美を追求しているようなこのグループは、決してハードロックのフィールドで語られるべきではないというのが私の持論です。 特にA-1においては、一聴した限りディストーションバリバリでネバネバの粘着質でヘヴィなギターと手数(てかず)の多いドラムスが思いっきり暴れまわるため、「ハード系」と括りたくなるのも無理はないかもしれません。 しかしキーボードの音色に集中して聴いてみると、なんとなく彼らの本性が見え隠れしてくるような感じがするのです!どこにでもありそうで実はあんまりない独特のキーボードです。 ヴォーカルも激しく歌っている時はハードロックしかできないような顔(というか声)をしているくせに、静かな曲になると全然違う表情に豹変します。このあたりは流石イタリア人、イギリス人やアメリカ人とは一緒にしてもらっちゃ困るとでもいいたげなローマ法王がいる国であるというバックボーンがものをいいます。 アルバム全体が進んでいくにつれてだんだん美しいメロディ中心になっていくような感じで、A-2あたりになるとヘヴィなのはイントロだけで、あとはもうたそがれムードたっぷりの一大叙情曲です。 B-1になると、もう夕暮れ時に聴いたりしようもんなら、その切なさに耐えられなくなるくらい涙腺直撃の名曲。歌メロ云々よりも雰囲気がそうさせてしまうのです。 そしてB-2。 このへんまでくると陸一心が北京駅に戻ってくるあたりのあの「大地の子」のクライマックスにも匹敵する感動で、すっかり自分を見失ってしまいました・・・。一聴したかぎりではどうってことない曲なんですが、なんとも口では表現しづらい珠玉のリフレインの上をピアノが走り始めると、涙でターンテーブルが見えなくなってきます。 でもそのバックでギターは相変わらずヘヴィに鳴りつづけているという、文章を読んだだけでは何がなんだかわからない世界ですね、これは。 イタリアン・プログレに哀愁を感じた方なら絶対に外してはならないアルバム。 特に「ハードな内容・・」等というキャッチコピーを聞いて敬遠していた方々、これを機会に是非一度耳にしていただきたいと思います。ロカンダ・デッレ・ファーテなんかよりもよっぽど泣ける一枚です。 (2004.07.20) |