第110回 SHIRLEY COLLINS&DAVY GRAHAM "Folk Roots, New Routes" |
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SHIRLEY COLLINS & DAVY GRAHAM
- "Folk Roots, New Routes" |
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RARE度:★★★★★★★★ |
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Member : |
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Shirley Collins(vo), Davy Graham(g) |
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Side (A) |
Side (B) |
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深遠なUKフォークの最も深いところに位置している一枚で、Shirley
Collinsの中でも最高の部類に入る作品。Shirley Collinsという人のアルバムは、恐らく目指しているところがあまりに高尚すぎるためか、ブリティッシュフォーク通の人でさえもその厳しさのあまり近寄り難いものがあるようです。
蜀の名将、関羽しか乗りこなせなかったという『赤兎馬』(セキトバ:中国読みは不明)という名馬がいましたが、彼女の作品というのはそういう感じなのかもしれません。(馬なのか・・)
ただその彼女の作品の中でもAshley Hutchingsとの結婚を記念して出したとか言われる『No Roses』(『ロックの王道を行け!』No.36)はそのロック性の強さのせいもあってか、そんなにも修行を積まなくても割りと聴きこなすことのできるアルバムです。FAIRPORTのRichard
Thompsonなんかも参加しているので、行きたくない人の結婚式の二次会に付き合いでいやいや行ったら、知ってる人がいてホッとしたみたいなアルバムでもあります。
後に発表された作品でALBION DANCE BAND名義のアルバム『Prospect Before Us』も、修行なしで入っていける作品で、『No
Roses』を気に入った方は気に入るんではないかと思います。
ただ、それ以外の彼女のアルバムは本当に厳しいものが多く、まだ現時点での私では修行が足りないせいか、心から酔うことのできるところまではいっていませんが、上記ロック系の2作品以外でお薦めなのが、今回紹介するアルバムです。
前置きが長くなりましたが、このアルバムは、なんと1964年という殆ど東京オリンピックの頃に発表された作品で、生ギターをバックに淡々とShirley Collinsが歌いつづけるというスタイル。それだけ聞くと『おっ、ちょっとやばいか』と思いますが、これだけは彼女の地味系作品の中でも地味に埋もれていない一味違う内容です。
何が違うのかうまく説明できませんが、歌声だけでこんなにも鬼気迫るアルバムを作ることができるというのは本当に驚きです。別に絶叫したりしているわけではないのですが、もの凄い迫力なんです。このアルバムを聴く時は、なぜかビールを飲みながらじゃだめで、ウオッカのストロワーヤみたいなのがピッタリきますね。
しかし、これジャケットの写真も凄いものがあります。Shirley Collinsの服装なんて、こんなの今じゃどこにも売ってないんじゃないでしょうか。しかもこのポーズも凄い。でもこれで内容が古めかしくないっていうのが、一番凄いことだと思います。本当にブリティッシュフォークのルーツです。