第102回 TARANTULA "Same Title" |
||
|
TARANTULA - "SameTitle" |
|
RARE度:★★★★★ |
||
Member : |
||
Rafael Cabrera(voz), M.G.Peydro(guitarra), Vincente Guillet(teclados),
|
||
Side (A) |
Side (B) |
|
スペインのプログレというとバスク音楽が有名ですが、ここで紹介するTARANTULAというグループはバスクではなく正統派のスパニッシュプログレのグループです。
スパニッシュプログレというとイギリスのCARMENのようなフラメンコに通ずるような、どちらかというとせわしないサウンドを想像しがちですが、このアルバムはもっと大陸的なサウンドで、大河がゆったりと流れていくような内容です。
このグループのサウンドの中でも特徴的なのが、力強い男性ヴォーカルで、『フィメール、フィメールと取りつかれたように繰り返していたけど、こういう男性ヴォーカルもたまにはいいもんだな。』と思います。
男性的と言ってもハード系のそれではなく、なんとなく闘牛士の勇ましさのようなものを彷彿とさせるもので、中古レコード店で試聴させてもらうと、『これ、どこの国?』『スペイン』『あ、やっぱり。』(ほんとかいな)ってな会話になるんじゃないでしょうか。
『ヴォーカルはステージの上では実は闘牛士の格好をして歌っていたらしい。』(うそです)なんて言われたら、思わず信じてしまいそうなそんな雰囲気です。
ただ同じスペインでもGRANADAとかTRIANAとかまで行ってしまうと、いくらプログレとは言え『うん?ちょっと違うぞ。オレは一体何を追い求めてきたんだろう。』って感じでUWFに行く寸前のタイガーマスクのような心境になってしまいますが、このアルバムはしっかりプログレなので、その点はご安心下さい。
またこのアルバムを名盤と言わしめている原因として、やはりメロディのよさと展開の妙があげられます。
聴いていて思わず赤面してしまう程にはドラマティックではありませんが、それでも山あり谷ありで、一気に最後まで聴かせてくれます。
静かな部分と盛り上がる部分のコントラストも絶妙です。
ヴォーカルが思いっきり伸び上がっていくスケールの大きなA-1は見事としかいいようがありません。
また、A面ラストは叙情的なフルートと泣きのギター(たぶんフラメンコギター)が泣き泣きの素晴らしい名曲で、聴いているまわりが一気にセピア色一色になります。
ただ、ところどころ入るキーボードの音色がやや新しめの音なので、この辺が好みの分かれるところかも知れません。
でも70年代の音楽って不思議なもので、本人達は良かれと思って新しい機材を使ってやっているのに、30年後のコレクターに『音が新しいからダメ』なんていわれるとは夢にも思ってもみなかったでしょうね..。
彼らはこの後、女性ヴォーカルを加えて2ndを発表。
これを聞いて身を乗り出した方、残念ながらこれが全然ダメなんです。
私も知人から『このグループの2ndだけは本当にダメだからやめとけよ。』と忠告されていたにもかかわらず、怖いもの見たさでついつい買ってしまったんです。
人間って見るなって言われるとよけいに見てみたくなるもんですよね。
家に帰って聴いた瞬間、『うおおおおおおおおおおおお』と一声叫んで私は事切れました。