第90回 ANGE "Au-Dela Du Delire" |
||
|
ANGE - "Au-Dela Du Delire" |
|
RARE度:★★★ |
||
Member : |
||
Christian Decanmps(key,vo), Francis Decamps(key,violin,vo), |
||
Side (A) |
Side (B) |
|
フランスというとヨーロッパの中でもプログレッシヴロック、ハードロックからは最も疎遠な国として非常に馴染みが薄い国です。
『MAGMAがいるじゃないか』と言われそうですが、あれはフランスというよりも地球外(惑星マグマ??)ということなので番外とすると(?)、このANGEというグループは数少ないフレンチプログレの代表的な存在ではないでしょうか。
シャンソンとかポップ系の音楽ではフランス語の語感が良い感じにハマるものもあるようで、最近では小洒落た喫茶店なんかに入るとたまにそういう系のささやきフィメールポップみたいなのを耳にすることもありますが、結局は日本語同様ロックにはむいていない言語なんでしょうか。
このANGEの音楽はそういう言語の壁を逆手にとったような感じで、特にこのグループのヴォーカルの巻き舌の吐き出すような歌い方は、そういう歌い方をすることによってのみフランス語をロックとして成立させることに成功しているように思います。(なんか理屈っぽくてよくわからんですね)
初期の作品は演奏がふわふわしているため、ヴォーカルがワイルドに歌っていても、なんとなく甘ったるさが抜けきらない印象でしたが、この3作目ではトータルコンセプトな作風とギターとリズムのハードな演奏が見事なバランスを保っており、時折り見せるヴォーカルの語りが寿司屋のガリ的なコントラストとなっていて退屈せずに一気に最後まで聴けてしまう内容です。
またメロトロンが前面に出ずに奥ゆかしくバックで演奏していて基本はあくまでもギターとなっているのも、甘ったるくならない効果となっていていいですね。
全体的な流れがドラマティックで、良く出来たお芝居を観劇しているようなアルバムで、イギリスのGENESISと比較されることが多いのですが、ヴォーカルが良いので私はこっちの方が全然良いと思います。
ヴァイオリンの調べがなんとも妖しげなA-1も不思議な魅力を放っていますが、A-2の迫力はイタリアのJUMBOみたいで卒倒間違いなし。
ヘヴィなギターに続いて軽快なドラムスが流れ、妖しげなメロディが流れ出すと、彼等の真骨頂です。
大見得をきりながら悪党どもをひとりづつ袈裟切りにしていくような迫力で、切った直後のキメのポーズのようなブレイクがこれまたかっこいいです。
そして漸く訪れた静けさにハッピーエンドか..と油断していると突然背後からゾンビが起きあがってきて、そいつさえも振り向きざまに切りつけてやった、みたいな大変ドラマティックな内容でとても満足感が残ります。
B面ラストのタイトルナンバーはインストゥルメンタルなのでついつい見落としがちですが、ガリガリと放電しているかのようなギターがハード系も真っ青という優れモノでしかもメロディも文句なしの名曲です。
また、この曲のエンディングには虫の鳴き声のようなものが収められていてこれも面白い効果となっています。
フランスヘヴィープログレの中ではEmmanuel Boozと並ぶ傑作と言いきってしまえる作品です。