第88回 CAMPO DI MARTE "Same" |
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CAMPO DI MARTE- "Same Title" |
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RARE度:★★★★★★ |
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Member : |
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Enrico Rosa(g,vo), Mauro Sarti(ds,flute,vo), |
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Side (A) |
Side (B) |
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イタリアのプログレの面白いのは、どんなにヘヴィーなアプローチをしていても必ずといって良いほど静の部分を取り入れている所ですが、ここで紹介するアルバムのまさにそんな感じで、そういうコントラストが好きな人にはたまらない内容ではないかと思います。
以前、海外ディーラーに、『イタリアのレコードはどれ聴いてもおんなじような感じだから好きじゃない。』と言われた事がありました。
その時は、なるほど色んな見方があるもんだな、とすっかり感心してしまいましたが、良く考えればそれって至極当然の事で、興味がない音楽とか好きじゃない音楽って誰でもそうですよね。私だって演歌ってみんな同じに聞えますし、クリケットの選手の顔ってみんなおんなじに見えますもん(見てないくせに)。
が、このアルバムに関していわせてもらえば、’同じ顔’とは言わせませんっ。
このグループは、これ一枚しか発表していない所謂『いきあたりばったりヘヴィープログレ一発屋』といわれているカテゴリーに属していますが、内容はもう肉汁が滴り落ちる米沢牛−僕はミディアムレアで、と言った感じで、ロックミュージックの関係者全てに聴いてもらいたいような優れた作品となっています。
ただ、このアルバム、ジャケットがあまりにもダサいので、『ジャケットアートも含めて70年代のロックを楽しみたい。』というコレクター諸氏には相当そっぽをむかれてしまっていて随分損をしているんじゃないかと思います。
このジャケットをヒプノシスあたりが手がけたようなジャケットデザインだったら、というのは、いつもながらの例えではありますが、BIGLIETTO PER INFERNOやALPHATAURUS級の待遇を受けていたかも知れません。(ってただプレミアが高いだけじゃないか)
発売してから30年近く経ってからファーイーストのコレクター達に歓迎されたからといって当のメンバー達にどの程度のメリットがあるのかについては、甚だ疑問ではありますが..。
A-1ののっけからの濃いギターは、『なんにも考えてないでただジャムってるだけでしょ。』風で、純プログレ系の人はこの辺を聴いただけで逃げていきそうですが、曲が進むにつれバンドのアンサンブルが整ってくるから大したもんです。
そしてドラムスが刻んでくるあたりになると、もうすっかり整合性のあるプログレッシヴなサウンドになっていて、ところどころ入るブレイクのキレなんぞは既に一級品の域です。
ギターとドラムスが派手に盛り上げた後の、独特のささやきヴォーカルとピアノプレイが『イタリア然』としていて、実に良いです。
さっきまでかんかん照りの中でじりじりと汗をかきながら草野球をやっていたかと思うと、一転して小雨が滴る湖のほとりで一人たたずむというような落差が聴いていて快感です。
地中海を想わせる熱気溢れるハードな部分と教会の荘厳な静けさは、本当にこの国ならではだと思います。
まあそれはさておき、このアルバム、A面、B面ともそれぞれ一曲につながっていて、転調を繰り返しながら中だるみすることなく最後まで聴かせてくれる本当に素晴らしいレコードだと思うのですが、聴き終わってレコードをジャケットにしまう時に改めてまた『この絵さえなければ..』と思ってしまった次第です..。