第75回 BENITO LERTXUNDI "Gaueko Ele Ixilen Baladak" |
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RARE度:★★★ |
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Member : |
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Benito Lertxundi, Olatz Zugasti, Pello Gereno, Marian Arregi, |
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Side (A)
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Side (B) |
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プログレフォーク系のファンにとっては決して避けて通ることのできないスペインのバスク音楽。
そのバスク音楽界の中でも大物に位置するこのBenito Lerxundiという人は、ウェールズで言えば(なんでウェールズ?)、かのMeic Stevensのような存在(わかりにく〜)といっても良いでしょう。
60年代あたりから80年代後半にかけて随分と息の長い活動をしていた(今はどうなのか勉強不足でわかりません)ようで、イタリア人ピアニストAntonio Breschiとの合同作品"Mezulari"が傑作として特に有名です。
ただ私にはこの作品は清涼感が強過ぎて今一つ好きになれません。
個人的に好きなのは80年代のソロ作品群です。
中でもここで紹介する85年の作品は、プログレッシヴ音楽とはかなりかけ離れたところに位置していて、所謂歌物に近い内容なのですが、メロディラインが素晴らしく、A面頭からもう涙腺は開きっぱなしジャーマンです。
マニアックなレコードをずっと探求し続けてきて、この辺にまで辿りつくと、知らない人から見ると逆にありふれた感じに聞こえてしまうらしいからこれまた不思議です。
私の妻にいつぞや『これ、いいでしょ??』と聴かせた際には『う〜ん。演歌みたいで嫌い。』といわれてしまいました。
エ・ン・カ・ミ・タ・イ・・・!?これはレコードコレクターとして一番人から言われてはいけない言葉です。
銀行マンが『金にだらしない』といわれるのと同じくらいの屈辱でした。
この瞬間、20年間レコードコレクターをやって積み上げてきたマニアの誇り(んな、えらそうな)が音をたてて崩れていきました。
まあ『好き食うタデもムシムシ』(おいっ)という諺もあるように、聴いている本人が好きならそれでいいんです。
となぜかちょっと言い訳がましいですが、レビューに戻ります。
A面は、よく言えば『ピレネー山脈の山並み』、悪く言えば『演歌のこころ』といった感じの佳曲がならんでいて、時折入る女性ヴォーカルのバックコーラスの声の美しさにハッとさせられます。
この女性ヴォーカルは、Olatz Zugastiというバスク屈指のフィメールシンガーで、数々のフィメールフォークファンを鼻血まみれにしてきたことで有名です。
A面はどの曲でもこの女性ヴォーカルが大々的に出てくる場面がなく、フィメールフォークファンをやきもきさせますが、そんな貴兄の祈りはB面で遂にかなえられます。
B-1。これはこのアルバムのハイライトといってもいい出来で、BenitoとOlatzの男女ヴォーカルの掛け合い風の曲が、Jeff BeckとRod Stewartの"Truth"の中の"You Shook Me"のヴォーカル版といった感じの見事なコンビネーションです。
Olatzのヴォーカルがエコー風味に歌い上げるところは、HAIZEAのAmaia Zubiliaに匹敵するほど美しい。
かつてこれほど美しい歌声を聴いたことがあるだろうか、いや無いに違いない。(おまえは国語の教科書の例文か?)
この女性ヴォーカルが前面にフィーチャーされているのは残念ながらこの曲1曲なのですが、この1曲のためだけでも、このアルバムは買っておく価値があると自分は思います。
また、この女性、実はソロアルバムも発表していて、そちらも勿論必聴の内容なのですが、このアルバムのB-1の美しさの方が一枚上手じゃないかとわたしゃ思います。