第58回 MAY BLITZ "Same Title" |
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RARE度:★★★★★ |
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Member : |
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Tony Newman(ds), Reid Hudson(b,vo), James Black(g,vo) |
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Side (A) |
Side (B) |
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あの伝説のBAKERLOOからDave Clempsonが脱退した後に、残りのメンバーが結成したといわれるMAY BLITZ。
但し、このデビューアルバム発表時にはその二人も脱退してしまい、ここではメンバーは総とっかえになってしまっています。(じゃあ、同じバンドでも何でもないじゃないの、とも思いますが。)
総とっかえ後は、元JEFF BECK GROUPのTony Newmanと若手2人で、この若手2人というのが本当に若く、噂によればこの当時16歳くらいだったといわれています。
(この後のシーンに登場しないので、詳しいことは不明)
16歳と一言に言いますが、高校1年生ですから驚きです。高校1年生がこの手の音楽を聴くというだけでも凄いのに、彼らはそれを演奏する側ですからね。
私がこのレコードを買ったのは、もう今から15年くらい前のことになるんですが、レコード店でこれを薦められた時は「うわっ、ダサいジャケット!買うのいやだな。絶対ヒプノシスじゃないしな。」と思った覚えがあります。
しかも裏ジャケにはこの大女の仲間みたいなゴリラがいて、こいつがもっとダサい。
なのに、長年愛聴してきた今となっては、こんなジャケットでもお気に入りになってしまうんだから、不思議なもんです。
当時私は所謂安下宿(XX荘ってやつ)暮らしの学生で、その下宿に住んでいる人間は全員学生だったので、ある程度なら大きな音で音楽を聴いても平気なでした。(多分)
そんな環境だったので、買ってまずは大音響でこれを聴き始めたものですから、大迷惑です。なんとA-1で窓ガラスが共鳴したんです。
今ではそんなヴォリュームでレコードを聴く根性はありませんが、特にあのイントロのベースがうなりをあげてミドルテンポに刻んでくるところで窓ガラスが「ビビビ、ビビ」と悲鳴をあげ、聴いているこっちは黄色い悲鳴です。
このA-1はヘヴィプログレとしては白眉の出来で、ジャケットのデブ女(ゴメンナサイ)を思わせるような重々しさは、あのHIGH TIDEのA-2と比肩しうるくらいのテンションを誇っています。
とても16歳とは思えない男気のあるベースプレイにも目を見張るものがありますが、それよりも何よりもTony Newmanの生涯最高のドラムスプレイには脱帽です。
こんな凄い人をよくJeff Beckが手放したなあ、という感じで、昔ブライアント(その後近鉄で活躍)を解雇した中日ドラゴンズのような心境だったに違い有りません。
聴き終わった後には、「やっぱり、ハードロックはミドルテンポに限る」という事を痛感させられる、そんな一曲です。
演奏プレイの水準の高さも去る事ながら、、もう絶対にVERTIGOのブリティッシュロックでしか出せないような雰囲気がアルバム全体を支配していて、そこには明るさ/軽さといったものは全く入りこむ余地がありません。(だからといってジャーマンロックのように暗い訳ではないのがブリティッシュの不思議なところです)
A-1以外で個人的に気にいっているのがA-3です。
和太鼓を連打しているかのようなドラムスは相変わらずですが、下校時刻を過ぎた後の夕焼けのあたる校庭で一人立ち尽くしているような(しかも隣には座った犬)そんな風景が思い浮かんでくるような内容で、遠い昔を強く感じさせてくれます。
彼らはこの後2ndアルバム(こちらも名盤)を発表後、Tony NewmanがTHREE MAN ARMYにヘッドハンティングされた(本当です)ため、バンドは自然消滅してしまいました。
彼はTHREE MAN ARMYでも活躍しましたが、どちらかというとこっちのサウンドの方が合っていたような気がします。