第55回 OPUS AVANTRA "Introspezione" |
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RARE度: ★★★★★★ |
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Member : |
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Donella Del Monaco(vo), Luciano Tavella(flute), Enrico Professione(violin) |
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Side (A) |
Side (B) |
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イタリアのトリデントレーベルと言えば、かのBIGLIETTO PER INFERNOやSEMIRAMISを世に送り出している由緒正しい廃盤レーベルです。
このアルバムはそのトリデントの6番にあたるものですが、上述のヘヴィプログレを身上としているアーチスト等とは全く趣を異にした作品です。とにかく数多いイタリアのプログレグループの中でも、このグループだけは全く持って特別なのです。
例えば合気道でいうところの塩田光三(知らんって)みたいなもので、良い悪いは別にして別格であるということだけは間違いありません。
プログレッシヴロックのフィールドで語られることの多いグループではありますが、ロックという範疇で語ることに疑問さえ感じてしまう、そんな作品です。
初めてこのアルバムを耳にしたときなんて、もう何がなんだかよくわからないうちに終わってしまい『なんじゃ、こりゃ?』てな感じで、まあそういえばヴォーカルは女性だったな、くらいの印象しか残りませんでした。
何がなんだかよくわからないうちに終わってしまうというと、どうしようもないドイツのB級プログレのハズレみたいなのじゃないかと思われるかも知れませんが、実は全くその逆なのです。
あまりにも奥が深過ぎるが故に、1回ではいや3、4回では理解できるような代物ではないということなのでしょう。
なんだかよくわからないものに身をゆだねる快感というんでしょうか。このアルバムを聴くといつもそんな不思議な気分にさせてくれます。
とは言っても、それはバブルの時代に活躍した方々が、良さもわからずにゴッホの絵をオークションで買って飾ってみたぜ的なものとはちょっと違うんです。
何にもとらわれずに真っ白なキャンバスに思いつく限りのことを書きなぐったかのような、それでいて緻密に計算されたようで、これを芸術といわずして何を芸術という!と叫びたい気持ちに駆られます。
同じイタリアのプログレグループBANCOも、じゅうぶんに芸術的ではありましたが、これに較べるとまだまだロック的であったなあと感じますね。
内容は、子供の合唱があったり喋り声があったりで次から次へと色々な場面に移り変わっていきますが、この移り変わっていく様は聴く人それぞれで感じるものに相当差があるんじゃないでしょうか。
普通のトータルコンセプト的なアルバムの構成と較べると実にアヴァンギャルドではありますが、アルバムのそこここに溢れでんばかりに散りばめられた美の結晶が、聴いていくうちに次々とはじけていく様は、本当に素晴らしいと思います。
ピアノ、フルート、ヴァイオリン、フィメールヴォーカルが中心となってはいますが、聴けば聴くほどにそういう楽器構成で云々いうことがこのアルバムに限っては意味のないことだったなあと思います。
このグループの女性ヴォーカルのDonella Del Monacoという人は、モノの本によるとイタリアでかなり有名なテノール歌手の姪にあたるそうで、ロックを聴いていた人間にとってはそれが誰なのか全くわからないんですが、そんな風に言われると有り難みも増し、確かにそんじょそこらの女性フォーキーとは格が違います。(多分オペラでもじゅうぶん通用するんだろうなあ)
私はこのアルバムを恐らく100回以上は聴いていると思うのですが、聴きながら書いている今でさえも、結晶がはじける場面場面では、本当に鳥肌がたってしまいます。
書きながらこんなこというのも何ですが、こういう音楽を私のような一介の素人が文章でどうこういうことにとても疑問を感じてきてしまいますね。
ジャケットは内容を見事に表現したかのような、なんとも奥ゆかしいこれまた素晴らしいものですが、その見開きジャケットの内側の素晴らしさと言ったらもう..。