第42回
ATOMIC ROOSTER
"Death Walks Behind You"
ATOMIC ROOSTER - "Death Walks Behind You" RARE度: ★★★★ |
Member : | Vincent Crane(key) , John Cann(g,vo) , Paul
Hammond(ds), |
Side (A) 1. Death Walks Behind You 2. VUG 3. Tomorrow Night 4. 7 Streets |
Side (B) 1. Sleeping For Years 2. I Can't Take No More 3. Nobody Else 4. Gershatzer |
このATOMIC ROOSTERは70年代のブリティッシュハードロック史を語る上で忘れてはならない非常に重要なグループのひとつです。
何が重要かというと、このグループ自体の存在云々よりもむしろこのグループから派生したアーチスト達の関連グループが所謂ATOMIC ROOSTERファミリーという一大ツリーを形成している点です。
このグループが存在していなかったら、ブリティッシュロックの歴史そのものが変わっていた可能性があります。
そういう意味ではDEEP PURPLEやフォークの大御所FAIRPORT CONVENTIONとよく似ていますが、決定的に異なっているのは、こちらは完全にアンダーグラウンドな存在だという点です。
ATOMIC ROOSTERというグループは、Vincent CraneとCarl Palmerによって69年に結成されます。
このVincent Craneというキーボード奏者は、60年代後半にロンドンのUFOクラブというところで活躍していたArthur BrownのユニットCRAZY WORLD OF ARTHUR BROWNに参加していて、結成から解散までの間ずっと在籍する唯一の不動のメンバーです。
1stアルバム発表後、Carl Palmerは脱退しEL&Pを結成。(この人はその後なんとASIAです)
変わりにPaul HammondとANDROMEDAからJohn Cannが参加し、この2ndアルバムを発表します。
その後、あの伝説のLEAFHOUNDからPeter Frenchが参加し、3rdアルバムを発表します。
Peter Frenchはこの後CACTUS(BB&Aの前身)に参加し、John CannとPaul HammondはQUATERMASSのメンバーとHARDSTUFFを結成。
4th以降にはHORSEからRick Parnell、COLOSSEUMからChris Farloweが参加します。
というような具合で、言い出すとキリがないのでこの辺でやめておきますが、今あがった名前だけでももう正にレア盤の宝庫といった感じで、ブリティッシュロックマニアにはヨダレ出まくり状態なのです。(?)
話をATOMIC ROOSTERに戻すと、このグループのレコードは初期の3枚が特に素晴らしく、4th以降も勿論悪くはないのですが、初期と較べるとガラリと雰囲気が変わってまいますので先ずは初期を聴くことをお薦めします。
人胸鳥(なんだそりゃ)のジャケットデザインがカッコ良く、代表曲『13日の金曜日』を収めた1stアルバムに人気と話題が集中しがちですが、内容でいうとこの2ndか3rdでしょう。
アルバムの完成度という意味では3rdの方が上なので相当迷ったのですが、オルガンヘヴィロック史に残る名曲A-4『7 Street』が入っている事が、最終的に今回2ndを選んだ理由です。
余談ですが、この2ndは彼等の全作品中最もヘヴィな内容となっています。
『7 Street』という曲はもともとはANDROMEDAの曲で、静かなハモンドの幕明けの荘厳さに襟を正す思いですが、John Cannのヘヴィなギターが『おれは元ANDROMEDAだ。』とヘヴィなリフを刻み出すと、Vincent Craneのハモンドもユニゾンで対抗、更に負けじとPaul Hammondバカテクドラムスのオカズ攻撃が炸裂するというとんでもない内容なのです。
そして、歌が2番まで終ると、いよいよメインイベントです。
どのメンバーも『さっきのイントロではあれぐらいで見逃してやったけどな、今度という今度は..』という感じで、凄まじいインタープレイの応酬です。
どの人も凄いのですが、ドラムスのオカズなんかもう本当に凄いと思います。あまりにも激しい戦いだったので、聴き終わった時にはちょっとグッタリしてしまいますが、これがA面の最後で良かったと思います。なぜならB面に行くのには少し休憩が必要だからです。
恐らくCDだとこの後にB-1がすぐ始まるのでしょうが、ちょっとそれだとつらいかも知れないですね。
先にも述べましたが、このグループに最初から最後まで参加していたのはオルガンのVincent Craneひとりなのですが、この人は昔ドイツのテレビ番組でEL&PのKeith Emersonとキーボードバトルをやったという噂を聞いたことがありますが、本当だとしたら死ぬまでに絶対見てみたいと思います。(お持ちの方がいらっしゃいましたら、ご一報を)
でも相手がKeith Emersonじゃなあ...。なんか船木−ヒクソン戦のような結末を想像してしまいますが。
中古レコード屋に行くとどうもこのグループのレコードは人気がないような気がしてならないのですが、なぜ彼等が不人気なのか不思議でなりません。
レアでマニアックなヘヴィプログレを聴く前にブリティッシュロックのファンなら絶対に押さえておかなければならない基本中の基本です。