第37回
BLUE CHEER
"Vincebus Eruptum"
BLUE CHEER - "Vincebus Eruptum" 1968 US PHILIPS PHS 600-264 (Hard Rock) RARE度: ★★★ |
Member : | Leigh Stephens(g), Dick Peterson(b,vo), Paul
Whaley(g) |
Side (A) 1. Summertime Blues 2. Rock Me Baby 3. Doctor Please |
Side (B) 1. Out Of Focus 2. Parchment Farm 3. Second Time Aroun |
アメリカハードロックの最高峰BLUE CHEERです。
私がまだ高校生の頃に買った週刊FMファンでちょうどハードロック特集というのをやっていて、その特集の中で『アメリカハードロック/ヘヴィメタルアルバム』の一枚として鳥居賀句さんがこのアルバムを紹介していました。それが私とBLUE CHEERの初めての出会いでした。
その時は、解説の内容よりもそのジャケットの凄さにすっかり心を奪われてしまい、『こんな強烈なジャケットのレコードが本当に存在するのだろうか...これは絶対に現物を見つけなければ..』と固く心に誓ったのでした。
しかもその本の解説によると『腰まで伸びた長髪が..』とあるじゃないですか。
いくら髪の毛が長いと言っても腰まで伸びたってのはちょっと大袈裟な気がしますし、多分肩ぐらいなんでしょうけども、それでも当時は今より純粋だったので、『トイレとか風呂はどうするんだろう』と小錦みたいなことを心配したりしたものです。
当時はこういう廃盤レコードをどこの店に行けば入手できるかという知識も全くなかったので、近所のデパート(確かユニー)の1階にあるレコード店(当時はまだCDはなかった)に行き、レコード注文票みたいなものに『アーチスト:BLUE CHEER、タイトル:Vincebus Eruptum、ジャンル:洋楽、レコード会社:フィリップス』等と書いて、お店に出した記憶があります。(本の注文じゃないって)
しかも難儀なことに、このアルバムタイトルが意味不明の言葉で、口に出して言うことができないので黙って紙に書いて出すしかすべがないのです。
勿論そんな方法で入手できる筈もなく、暫くしてから店員さんに『これ、廃盤っすわ』と軽くひざ車を掛けられてしまい、そういわれると却って欲しくなるのが人情というもので、このアルバムを入手するというのが私の二十歳までのひとつの大きな目標となりました。
実際にこのレコードを入手したのは、それからおよそ2年という月日が流れるのですが、本物のジャケットを見た時の感激といったらもう、耳の後ろの脈拍なんか全然普通じゃなくなってしまってそりゃ大変でした。
それにジャケットの表面はエンボス加工(字の部分とかが浮き出ている)なのです。
そして更に音を聴いてみると『なんだ、こりゃ、こんなSummertime Bluesがあるのか!これじゃ全然違う曲じゃないか!』というぶっ飛びの内容で、しかも3人...。
バスドラの音なんてもうドラムスとかいうんじゃなくて完全に和太鼓なんですわ。こういうのを歪みの美学っていうんでしょうか。
ギターもベースもずっとガリガリ、ギギギーッ、ゴゥーーッ、って感じで、更にDick Petersonのヴォーカルも戦国武将の勝どきをあげるような声(聞いたことあるんか)なのですからたまりません。
血気盛んな若い頃じゃないとこういう激しいレコードはなかなか聴けないものです。
A-1の『Summertime Blues』以外には、B-1もなかなかカッコ良い内容です。イントロのギターが迫力満点で、ノコギリで樹齢千年の大木をぐいぐい切っているような音が凄まじいです。
そしてB-3。このイントロの破壊力だけでアメリカハードロック史にその名を残すんじゃないでしょうか。
赤影(ふるぅ〜)に登場していたような巨大怪獣が突進してくるかのような和太鼓、もといバスドラの連打に、ディストーションバリバリのギターが雷鳴のように切りこんでくるという想像を絶する内容です。
本作品はデビューアルバムで、続く2ndアルバムも1stに負けないくらいの内容ですが、ジャケットが弱いのが残念です。
3rdはややテンションが下がりますがまだ聴ける範囲で、その後の4作目以降はかなりパワーダウンするらしい(未聴です)との噂です。
また、80年代に突然復活し、再結成とは思えないくらい充実したアルバムを発表してファンの度肝を抜いたという話も聞いています。恥かしながらこちらも未聴です。いずれ聴いてみたいと思っています。