第31回
CLAIRE HAMILL
"One House Left Standing"
CLAIRE HAMILL - "One House Left Standing" 1971 UK ISLAND ILPS 9182 (Folk Rock) RARE度: ★★★★ |
Member : | Claire Hamill(vo,g,key), John Martyn(g),
The Alex Welsh Band(g), David Lindley(g), John Hawken(key), Ray Warleigh(flute), Terry Reid(g,vo), Jack Emblow(accordion), John Pignegny(french-horn), Andrey Johnson(oboe), Phil Bates(double-b), Simon Kirke(ds), Tetsuo Yamauchi(b), Rabbit(key,vo), Paul Buckmaster(cello) |
Side (A) 1. Baseball Blues 2. The Man Who Cannot See Tomorrows 3. Consummation 4. The River Song 5. Where Are Your Smiles At |
Side (B) 1. When I Was A Child 2. Urge For Going 3. Flowers For Grandma 4. The Phoenix 5. Smile Your Blues Away |
数多いブリティッシュフィメールシンガーの中で、個人的に一押ししたいのがこのClaire Hamillです。
この人の事は、フォーク/トラッド等の音楽誌のレビュー等を見る限り、他のシンガーに比べて過小評価されているような気がしてならないのですが、少なくともSandy Denny、Bridget St.John等と同等の評価を与えるべきだと思います。声の美しさだけで言えば、それ以上といっても決して言い過ぎではないと思います。
ブリティッシュフィメールシンガーの中では5本の指に入れたい存在です。
今回紹介する1stアルバムと次作2ndアルバムで聴くことのできる彼女の歌声は、まさに天使の歌唱といっても良いくらいの素晴らしさで、どこまでも透き通った透明な湖のほとりで人知れず静かに歌う森の妖精のようです。
時折ちょっと少女っぽいあどけない声になったり、大人っぽい魅惑的な声になったり、実に表情豊かで、ちょっと裏声っぽくなるところなんぞはもう考えられないくらいに美しいです。
声自体に華があるので静かなところでも『じみぃ..』『くらぁ..』にならないのも良いと思います。
アルバム全体の雰囲気としては、ブリティッシュフォークがベースとなってはいますが、トラッド色は全くなく、ちょっとポップな味付けもなされています。
ただ、ポップとは言っても一定の緊張感は常に保たれていますので、プログレファンにも通用する内容です。『何これ?普通のポピュラー音楽じゃないの?』と言われるようなミーハーなところまでは魂を売ったりはしていません。
Kate Bushをもっと清楚にして、より英国フォークっぽくさせたような感じで、でもAnnie Haslam程甘くなり過ぎていない、と言えば、もう少しわかりやすいかも知れません。
A−1は彼女にしては異色のアメリカっぽい作品で、他の曲とはかなり異なる雰囲気となっています。曲名の通り天気の良い休日の昼間にメガホン片手に千葉マリンスタジアムにでもふらっと出かけたくなるようなそんな気分にさせてくれます。
先日やっていたNHKのメジャーリーグの特集番組で、エンディングにこの曲がかかっていたのにはビックリしましたが、確かに『野球』というよりは『メジャーリーグ』という雰囲気です。
また、このアルバムにはオーケストラもところどころ挿入されているのですが、彼女の歌ととてもマッチしています。
これ以上にオーケストラが前に出てくると『ちょお、うるさいわぁ』ってことになるのですが、その辺のところを実によくわきまえていて、でしゃばり過ぎず引っ込み過ぎずなかなか良い感じです。
次作『October』はこれよりもっと素晴らしい内容で、秋枯れの哀愁たっぷりの名作となっています。
くどいようですが、フィメール物が好きな方は1stも2ndも必聴です。