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第356回 CHICKEN SHACK - "40 Blues Fingers Freshly Packed And Ready To Serve"
   1968 UK-BLUE HORIZON 7-63203 (Hard Rock)
RARE度:★★
Member :
Stan Webb(vo,g), Christine Perfect(vo,key),
Andy Silvester(b), Dave Bidwell(ds)
Side (A)
1. The Letter
2. Lonesome Whistle Blues
3. When The Train Comes Back
4. San-Ho-Zay
5. King Of The World

Side (B)
1. See See Baby
2. First Time I Met The Blues
3. Webbed Feat
4. You Ain't No Good
5. What You Did Last Night



イギリスの3大ブルース・ロック・バンドの一つに数えられる チキン・シャックのデビュー・アルバムです。

3大ブリティッシュ・ブルース・バンドの中ではこのチキン・シャックが 最もロック寄りで聴きやすいのではないかとは思っていますが、それでも、このデビュー作は、とにかくのっけから渋い、渋い。

リーダーのスタン・ウェッブはこの時若干22歳。バンドの結成が 65年ですから、結成後2年以上練り上げたあげくのリリースと なるのでしょうが、この渋さは一体どうしたものでしょう。

『鶏小屋』というバンド名の通り実に乾燥した音楽性で、それは多分に ギタリストのスタン・ウェッブの奏法によるところが大きいと思いますが、のちにフリートウッド・マックでも80年代まで大活躍するクリスティン・ パーフェクトのキーボードが入っていてもそれでも、乾燥した埃っぽい 空気は壊れる事がなく、独特の香りを放ちます。

軽薄とかキャッチーとかポップとかそういうものとは全く無縁の世界で、当時のロンドンを中心とした音楽シーンのレベルの高さがあるとはいえ、そんな若者たちが作成したアルバムが、50年近くの時を経てもなお、これだけ渋い輝きを放ち、世界中のおっさん達(だけ?)を魅了し続けるというのはどういうことなんでしょうねぇ。

ひとえにドラッグの力だけでは片づけられないような気もします。

水あめのようななめらかで瑞々しいウェッブのヴォーカルはなんとも 個性的ですが、何曲かでリード・ヴォーカルをとるパーフェクトの歌声も 最高です。80年代のマックでのソング・バードとはまったく別人の渋さで、この頃の方が熟練しヴォーカルにも聞こえて音楽性とは、ミュージシャン の個性をもかように変えるものか!とも思います。

そしてやはりウェッブのギター。

エレクトリックなのに電気を感じさせないこのウッディ響きに、弦まで 木でできているんじゃないかという程のやわらかくて、やさしい音色の ブルース・ギターです。ウッディなギターの音色と彼の水あめの歌声は 実に見事にマリアージュ。いつまででも聴いていられるアルバムです。

彼らの作品では後に『イマジネーション・レディ』等というハード・ ロックの境界まで迫った名作もありますが、この1stアルバムのピュア・ モルトな感じは唯一無二です。

そう、できれば、この手のサウンドを聴くときは、ビールや日本酒、ワインではなく、樽のニオイの強いスコッチ・ウイスキーをストレートで ちびちびやりながら、アテ(なんかベタだな)はスモークされベーコンと チーズ。そして木目に穴なんか開いた年季を感じるちょっと汚い カウンターで、間接照明の薄明りでタバコに火をつけながら、ちょっと かび臭くてでもその臭いがいつの日か忘れられなくて、絶対に会社の上司の悪口や人事の話やゴルフの話なんか一切しない人たちと一緒に 聴きたい、そんな宝物のような一枚です

本場アメリカのブルースに比べると、その根底に流れる「虐げられた ものの怨嗟」のようなものが無いせいか「軽い」と評する声もあり ますが、その分単純に、気楽に楽しめるのがブリティッシュ・ ブルースかもしれません。よって、このアルバム、私は70歳に なっても聴ける自信があります。

エルサレムは微妙だけど、チキン・シャックはイケますよ、絶対。

秋風が吹いてきたらブリティッシュ・ブルースです。

- 4520013 CHICKEN SHACK/40 Blues Fingers Freshly Packed And Ready To Serve → http://bit.ly/YRJtBw
  
(2014.0.30)