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第352回 ATLANTIC BRIDGE - "Same Title"
   1970 UK DAWN DNLS3014 (Jazz Rock)
RARE度:★★★
Member :
Mike McNaught(key), Jim Philip(flute, soprano, tenor), Daryl Runswick(b), Mike Travis(ds)
Side (A)
1. MacArthur Park
2. Dreams
3. Rosecrans Boulevard


 ] Side (B)
1. Something
2. Dear Prudence
3. Childhood Room

かのヘンリー・ロウザーのグループに参加していた面々が結成したユニットが繰り出したジャズ・ロック・アルバムです。

一口にジャズ・ロックと言ってもその幅は広く、ロック色の濃度で測ると、例えば、ロックよりのコロセアム(COLOSSEUM)が濃度10なら、こちらは、中間より薄口という事になるのでしょうか。

全曲インストという構成は、ハード・ロックが大好きな私のようなモノにとっては、ドラムレスに次ぐハードルの高さで、ガッツリ肉食系のの若き血潮が煮えたぎるロック・ファンとしては、実は『物足りない』という思いが隠せずにいたのです。

ところが、同じ牛肉でもギラギラ脂ぎった所謂ステーキより、サッパリ口当たり良くカルパッチョに仕立てました、と来ると、同じ 食材でも、コレならイケル!という事がありますが、久しぶりに針を落とすと、『オヤ?これはイケル!?』とそんな感じ。

でもその演奏のレベルと言い曲の構成と言い、これは決して魚ではなく牛肉は牛肉。しっかり食後感もあり、口当たりは良くとも、濃厚なアルバで、ジャズ・ロックの入門編と位置付けられる事もあるようですが、この絶妙間は、むしろ耳の肥えた玄人好みのアルバムと 言えると思います。

さて、その内容ですが、まず曲はカバーが中心。でも、どの曲も『アレ?これなんだっけ?』と思わせるアレンジが素晴らしく、脱帽モノです。

例えば、A-1ではいきなり、ジム・ウェッブの名曲マッカーサーズ・パークのカバーが始まります。(ドナ・サマーもカバーしていますね!) ハッキリ申し上げますと、ベガーズ・オペラ(BEGGARS OPERA)のカバーの方が断然好きなのですが、あの叙情的な名曲をここまでやって しまうのか!!というアレンジです。スタンダードを装いながら、パワーもあり、インストなのに、原曲の高揚感は失われていません。

そして極めつけはB-1。

ビートルズのカバーなのですが、途中までまったく気付きません。原曲のメロディと香りが、かすかに漂っている程度です。最近のディランが 自分の曲を演るのに、アレンジしすぎていてお客さんもわからない現象があるようですが、それに近いかも。カフェやバーで流れていた日には、 原曲には気づかないままやり過ごしてしまいそうです。

『音楽は橋であるべき』とはじまり、ジャンルに縛られず、耳に残して、言葉にしなくてもいい…というようなクレジットがあるにも関わらず、 大いに語ってしまいましたが、気楽なセッションや偶然のジャムから繰り出されたと思われるような大胆なアレンジこそが、ジャズ・ロックが ジャズ・ロックたる所以であり醍醐味。

そこを大いに堪能できる一枚でもあります。

あの風で左右に揺れて崩落する有名な橋の写真ような、ジャケットもカッコよく、これほどスウィングしていますよ、という暗喩なの でしょうか?さりげないBGMとしてもオシャレですし、ガチンコとしても十分に楽しめる一枚は、大人のゴールデンウィークに是非。

- ATLANTIC BRIDGE/Same → http://bit.ly/1rNQVHn

(2014.05.01)