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第349回 EIRE APPARENT - "Sun Rise"
   1969 UK BUDDAH 203 021(Psychedelic Heavy Rock)
RARE度:★★★★
Member :
Eric Christopher Stewart(b), Ernest Harold Graham(vo), Michael Charles Cox(g), William David Lutton(ds)
Side (A)
1. Yes I Need Someone
2. Go To Get Away
3. The Clown
4. Mr. Guy Fawkes
5. Someone Is Sure To (Want To)

 Side (B)
1. Rock 'n' Roll Band
2. Morning Glory
3. Magic Carpet
4. Captive In The Sun
5. 1026


新年という事で、縁起のいいタイトル『サン・ライズ』を掲げた一枚です。

英国ヘヴィー・サイケとしてはなかなかの内容の作品であるにも係わらず、 意外とマニアや専門誌からも見逃されてしまっている作品です。

かといってこの作品、話題性は実は盛りだくさんで、プロデュースが ジミ・ヘン、そしてブリティッシュ・フォークのマニアならあのタバコを くわえたジャケを知らない人はまずいないであろう有名人、アーニー・ グラハムがデビューしたのがこのアルバムなのであります。しかもノエル・レディング、ロバート・ワイアットもゲスト参加して いるという、ブリティッシュ・ロックの裏スーパー・バンドと言っても 良い豪華なミュージシャンによるものです。

プロデューサーのジミヘンも 殆どの曲でギターとして参加していると言われており、そこがふつうの サイケ・ロック・アルバムとは一線を画するところでしょう。

まずはジャケット。 ビートルズ/6の裏バージョンと言った感じのデザインが少々微妙です。 60年代っぽさを消して革新的な70年代の夜明けを意識しているのかも しれませんが、それが逆に今となっては中途半端なレトロ感になってしまいました。

全員作のA-1はハリケーンのように過ぎ去っていきますが、アーニー・ グラハム作のA-2あたりは、ブリティッシュ・フォークの芳香に身を 包んだ60年代サイケといった興味深いテイストになっています。 しかもコーラスもいい感じで、誰にも決してマネできない音が偶然に 生まれてしまったかのような不思議な魅力の作品。

とにかく英国60年代の面白いところを全部ぶち込んでいる感じで、ゴッズ (GODS)の混沌、ガン(GUN)の疾走、ハニーバス(HONEYBUS)の 甘酸っぱさ、ムーヴ(MOVE)の歌メロ等が随所に感じられる多品種 ブドウによる保存状態の悪いビンテージ赤ワインを飲んでいるかのような 楽しさを感じます。

曲によってはストリングスもアコースティックが入ったり、メンバーが それぞれが好き勝手に作ってしまったのか、作者によって曲の雰囲気も ずいぶん変わります。それがこのアルバムのつかみどころのなさを更に 助長している感じです。 それでもってそこにアーニー・グラハムとジミヘンのギターが加わる のですから、これはタマリません!

あと、もっと言えばUSロックの 味付けも少々…。(もういいですか!?)

纏めてみますと、アルバム全体を通して元気一杯なのに、さすがに これだけのブリティッシュ・ロックの強者が参加しているせいか、 陰鬱さも十分で、元気な癖にまったく明るさはなく、サイケデリック・ サウンドにジミヘンのギターが渦を巻きながら切り込んでくる様は、 ヘヴィ・サイケ好きには宝物のような作品でもあり、聴き所は満載で 聴く程に好きになってしまう『裏名盤』です。

景気は上向きらしく元気なようですが、社会全体にはあまり明るい 印象のない2014年のスタートらしい(?)一枚。

今年も宜しくお付き合いください。

- EIRE APPARENT/Sun Rise (UK盤) http://bit.ly/1d2n0pa
- EIRE APPARENT/Sun Rise (US盤) http://bit.ly/K85FQl

(2014.01.10)