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第346回 TIME- "Same Title"
   1975 UK BUK BULP2005(Progressive Rock)
RARE度:★★★★
Member :
Gary Margetts(g,key,vo), Jode Leigh(ds,vo), Triss Margetts(b,vo), Alec Johnson(g,vo)
Side (A)
1. Shady Lady
2. Turn Around
3. Violence
4. Yesterdays, Today, Tomorrow
 Side (B)
1. Dragonfly
2. Liar
3. Hideout
4. Steal Away

ブリティッシュ・プログレの隠れた1枚です。

スポ根、もといスポコン(スポンタニアス・コンバッション)でブイブイ言わせていた英国3大兄弟のひとり、もとい一組が在籍しているということで廃盤市場をにぎわせていますが、スポコンとは似ているようで似ていないすれすれの作品です。

なぜなら、スポコンを聴いて、大声でわめいたり、歌ったり、騒いだり、泣いたり(?)していた若者が、その流れでこのアルバムに来ると、実はビミョーなんです。タテノリがないんです。

頭を前後に振る例のアレではないですが、レコード聴きながら、コーヒー片手にバスドラに合わせて足でリズムをとりながら聴く、そういう感じではない不思議な音楽です。

デビッド・ボウイ等のメジャー系アーチストのプロデュースの他ヘヴィ・プログレの名盤を手掛けた事でもしられている、ドイツの辣腕プロデューサー、トニー・プランクが担当しているのですが、そのせいもあってか、演奏内容とか曲が云々という以前にかなり緻密な音作りになっていて、音の粒ひとつひとつが小さいといった精密機器のような印象でもあるのです。

曲は、そんな緻密さの上に、どれも長尺で、更にすべてが変拍子でできているような曲ばかりなので10回や20回くらい聴いただけでは口ずさむことすらできない非常に難易度の高いアルバムです。

そう、口ずさめないんです!

これはロック・ファンにとってはかなり凄い事ではないでしょうか?

それでいて、ギターは超絶、ヴォーカルは特殊加工された摩訶不思議な質感で、まさしく音迷宮です!!

そんなリスナーお構いなしに、アルバム自体は実に様々に展開していくのですが、とにかく複雑で、それでいてフリーな感じではなく、「プログレ」という範疇以外に入れようがないのです。(まあ無理して入れなくてもいいのですが。)

メンバーもさすがに疲れたのか、B-2〜B-4まできて、少しノレる普通っぽい曲に来たな、と思ってしまうのも計算づくの事なのかもしれません。

そして、ライブはどんなんだったんだろう?という妄想が膨らみます。

A面のような展開では聴衆も立ち上がる事ができなかったに違いありませんし、アンコールも多分しなかったと私は読んでいます。(余計なお世話ですが)。

更に不幸なこと(?)に、このグループ、THE BAND同様、バンド名があまりに普通の名詞すぎて、インターネット検索で彼らに辿り着く事が容易ではありません。もちろん結成当時に、こんなことで後のリスナーが苦労するとは、まるで予期できたことではないのですが。

と、埋もれてしまう要素が揃い過ぎた名盤です。

もっともっと精進して、このレコードを口ずさめる身体に作り上げ、本当のロック・ファンになることが当面の目標でもあります。

(2013.10.10)