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第345回 SIXTY NINE - "Circle Of The Crayfish"
   1972 GERMANY PHILIPS 6305 164 (Hard Rock)
RARE度: ★★★★
Member :
Armin Stoewe(key,g,vo), Roland Schupp(ds)
Side (A)
1. Ballast
2. Kolibri
3. Becoming Older
4. Journey
 Side (B)
1. Paradise Lost
2. Crayfish



ジャーマン・ハード・ロックの中でもある意味異質な一枚です。

ドイツのハード・ロックというと先ずもってドロドロ。ヘヴィーでも音はぐしゃっとしていて、熱気もすごいがキレは悪く、録音もなんだかモゴモゴしていると、まるで、名古屋の郷土料理 『味噌煮込みうどん』(ご存知ですか?)さながらです。

さて、ここで紹介するSIXTY NINE。ドイツとは思えないキレと音質の良い迫力のサウンドで、のっけからのスピーディかつキレキレ、ノリノリです。サウンドも重厚。キレはあると言っても決して 明るくならず、決して暗くならないのがジャーマン・ロックならでは。

兎に角、オルガンのうなりの感じはまさしく全盛期のキース・エマーソンを彷彿とさせるもので、相当な影響を受けていたにせよ、凌駕する勢いで、 サイケ色、ブルース色が薄いのもこの頃のドイツのプログレ・ヘヴィーっぽいのです。

驚くべきは、このサウンドを繰り広げているのが、バンドではなく、キーボーディストとドラマーという二人のユニットです。この分厚い音もたったふたりぼっち!

アルバム収録曲もA面4曲B面2曲と大作志向ではありますが、インパクトといい、重く暗い盛り上がりと切れ味といい、その点ではA-1のインストゥロメンタル・ナンバーは最強です。

イントロのドラムスはモーターヘッドの例の曲並みの手数とツーバス連打。オルガン以前にこれが結構すごい。そしてそこにクラヴェッツや エマーソンばりのブゥーン、ブゥーン系のオルガン、それが渾然一体となって16ビートで迫るのですから、もうB級マニアにはたまらないです。

それでいてなぜかクラシカルなフレーズも挿入されていたりと、狂喜乱舞な世界です。EL&Pの頭脳改革患者にはもってこいのアルバムだと思います。

さらにB面。

やっぱりドイツです。少しグダグダしてきます。レコードを裏返すといきなり酩酊感が満ちてきて、やや眠気を催すもの、その先にはお楽しみの、インスト・ナンバー&タイトルナンバーが再び 待ち受けています。ショベル・カーが固い岩盤をガリガリと削っていくような破壊的かつ劇的なチューン。ドラムスも最後の晴れ舞台とばかりに大暴れです。

ここにきて、ようやくザリガニ(Crayfish)のサークルが完成したという事なのでしょうか。最初よければ最後よし。 最後よければすべてよし!?です。

この二人はライブアルバムも発表しており、実際にライブもこなしていたようですが、こんなサウンドを最初に聴いた聴衆の反応はいかほどだったのでしょうか。一度経験してみたかったものです。

たった二人でもこれだけのパフォーマンスができるのだと、数がすべてではない事も忘れずに。

(2013.08.30)