Back To Home

第341回 TAMBURLAINE - "Say No More"
   1972 NEW ZEALAND-TARTAR SLC105(Folk Psyche)
RARE度: ★★★★★
Member :
Denis Leong(g,vo), Simon Morris(b,vo), Steve Robinson(g,vo)
Side (A)
1. Pass A Piece Of Paper
2. Lady Wakes Up
3. The Raven And The Nightmare
4. Do For The Others

 Side (B)
1. Some Other Day
2. Rainy City Memoirs
3. The Flame Of Thoriman


ニュージーランドのフォークです。

・・と聞くとなんだか軽くて明るくて薄っぺらな感じを想像してしまいがちですが、太陽の光を浴びて熟した果実的のように芳醇なアルバムです。

ブリティッシュ・フォークが持っているような歴史と伝統を感じさせる陰鬱な雰囲気や、アイリッシュの持つギネス・ビールを片手にじっくり聴き入る感じとまた一線を画し、それでいてUSものの大陸感、はたまた ちょっと白昼夢かかった程のエスカレートもありません。

しかし、所謂ヒッピー系のコーラスが全面を支配していて、その手の音楽であることは否定できないと思います。

全体の雰囲気は軽くはないというものの、男性3人のトリオなのに、午後の木漏れ日や海面のきらめきを感じさせる珠玉の美しさの上に、効果的なエレピも入ってやたらと瑞々しいサウンド。プルプルです。

A面1曲目からもう何とも言えない揺れ方が最高です。コリン・ヘアのような鼻にかかったヴォーカルも良くて、そこからA-2への入り方も抜群です。A面ラストは大サイケ大会へと展開し、すわイギリスの ミドル・アース・レーベルか!?といった音は、めまいを起こしそうな不思議なサウンドで、とてもマニアライクです。

B面が3曲構成というところも、普通のフォークに収まらないところだと思います。耳触りのいいフォークのB1から、叙情的なピアノナンバーの2曲目はじわじわと深みに溶け込んでいくような ミステリアスさも持ち合わせ、ラストのロング・ナンバーがこのアルバム最大の聴きどころです。

風を切って大草原を駆け抜けていくような壮大なフォーク・サイケ・シンフォニーで、フォークかと思うとサイケ、かと思うと途中ザ・フーになったりムーヴになったりして、このあたりがユーロでない国の持つ 不思議さなのかも知れません。

あまり聴いたことのない不思議な盛り上がりを体験できるこの一枚はフォーク・ファンだけではなく、70年代フリークには間違いなくお薦めです。

トーンを落としたようなジャケットが独特の雰囲気で、一番左の人は、多分、理系の出身だな、とどうでもいい推測をするのですが、そのジャケのムードが恐らく秋の設定にみえるも、この春の陽気に 合わせて聴くのも全く問題なく楽しめるのでご心配なきように。

(2013.04.30)