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第340回 KATE BUSH - "The Kick Inside"
   1978 UK-EMI EMCP32231967(Female Rock)
RARE度: ★
Member :
Kate Bush(vo), Stuart Elliott(ds), David Paton(b), Ian Bairnson(g), Duncan MacKay(key) and etc.
Side (A)
1. Moving
2. The Saxophone
3. Strange Phenomena
4. Kite
5. The Man With The Child In His Eyes
6. Wuthering Heights
 Side (B)
1. James And The Cold Gun Feel It
2. Feel It
3. Oh to be in Love
4. L'amour Looks Something Like You
5. Them Heavy People
6. Room For The Life
7. The Kick Inside

イギリスの中島みゆき、いや逆か。すみません。

YouTubeのお陰で、お二人のステージパフォーマンスを拝見し、ちょっと 被っていやしないかと思うのは私だけではないと思うのですが、ケイト・ ブッシュはイギリスを代表する類まれなる個性派、元祖アート・ポップ・ アーティストです。

ピンク・フロイドのギルモアに見出された事はあまりに有名な話で、 このデビュー・アルバムはなんと19歳!日本のアイドルに比べれば、さして若くもないのでしょうが、同じ「音楽」というカテゴリーに 括ってしまうのにも少し憚られるところでもあり、19歳でのこの出来は 驚くに足るものだと思います。

さてこのデビュー作。

私はなんといってもA-1に針を下ろしたときに広がる神秘の世界が度肝を 抜かれます。深くまろやかでまったくの別世界が聴いている部屋全体に 広がるとんでもなさ。予備知識としてある程度知っていて聴いても毎度 新鮮な印象を受けるというのに、このアルバムを初めて手に取った 人たちは驚いたに違いないと思います。

サンディー・デニーがピュアな『天使』だとしたら、こちらはもっと 『妖艶さ』も持ち合わせている感じで、邦題の『天使と小悪魔』は 言い得てるようですが、ボクなら『妖しい小悪魔』かな(ベタ過ぎる…)。

個性派シンガーの音楽は聴く環境に制約を与えがちですが、この人の スピリチュアルなヴォイスと洗練されたサウンドで、緑深いの湖畔の イメージと共に都会の夜景でもよく合い、全く聴く環境を選ばないのも 特徴ではないでしょうか。強いて言えば「アジアのビーチ」は無理かとは 思われますが。

クライマックスは、エミリ・ブロンテの小説をモチーフにした ご存知『嵐が丘』です。この手のサウンドの中では最強です。 激しい雪と風の荒涼とした土地の厳しさに、愛憎が絡み合った激しい 恋の行方は!?とドラマチックこの上ありません。そして永遠のピアノ・ プレイは我らが(?)ダンカン・マッケイ(Duncan Mackay)です。

B面になると更に大人びてセクシー感も増します。B-2あたりで、再び 歌っているのが19歳だったと思いだし、この歌唱力に愕然とするやらうっとりするやら。後半は少し癒しのサウンドに、そして最後のタイトル曲はしっとりと 幕を閉じる…、と、一気に聴けるのも名盤の証しです。

尚このアルバム、イギリス盤のオリジナルはピクチャー・ディスクで、 そのお姿はレオタード!オリビア・ニュートンジョンの健康的な レオタード姿とは全く違って、やっぱり『妖艶』なのです。

最後に忘れてはならないのが、デビュー作にしてこのジャケット! 凧に乗ってしまった人は、赤影に出てくる白影(もう誰も知らん) 以外にこの人しかいないと思います。 桜吹雪が舞うこの時期が、凧に乗るにもピッタリで、この一枚です。   

(2013.03.30)