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第324回 BLONDE ON BLONDE "Rebirth"

BLONDE ON BLONDE - "Rebirth"
1970 UK-EMBER NR5049
(Progressive Rock)

RARE:★★★

Member :

Leslie Hicks(ds),Gareth Johnson(g),
Richard John(b), David Thomas(vo)


Side (A)
1. Castle In The Sky
2. Broken Hours
3. Heart Without A Home
4. Time Is Passing
5. Circles


Side (B)
1. November
2. Colour Questions
3. You'll Never Know Me/Release



皆が大好きなボブ・ディランのアルバムタイトルをグループ名に 戴いていることで、突っ込まれっぱなしだったのではないかと、余計な 想像をするのですが、ウェールズ出身の英国プログレッシヴ・ロック・ グループです。先に申し上げます。隠れた名作です。

包容力満点の表情をした女性がなんとも魅力的なジャケットは、一度 見たら忘れられないデザインですが、彼らの最高傑作とも言える、 本作2ndアルバムの内容はジャケット以上に印象的です。

演奏自体はインディアン・サマーのような柔らかなドラムスと 目立ちすぎない楽器群の調和が見事で、曲も多様性に富んでいます。

しかしこのアルバムの特徴は、ヴォーカルに尽きます。

この頃のブリティッシュ・ロックにはまったく似つかわしくない ウェットな歌声で、ややエコー気味な加工も手伝って、非常に瑞々しく 伸びやかに歌い上げています。そう、まさしく『歌い上げる』という感じ。 しかし、イタリアンプログレのような『伝統的歌い上げ』とは異なり、 あくまでも、『ロック』の域を出ない歌いッぷりは聴く者を痺れさせます。

始まりのA-1が、何はさておきの名曲で、ピアノの調べも美しく、そして 躍動的な曲調、ギターも目立ちすぎない泣き泣きで、エコーなヴォーカル が空中をふわふわと舞うその微妙な重力の塩梅が独特です。まさしく A-1にふさわしい一曲です。バック・コーラスも更に浮遊感に拍車を かけます。

続くA面はバラエティに富んだ内容に飽きさせることを知りません。 後半に行くにつれハードに展開する曲もとてもよく練られています。

しかし!B-2まで来ると、プログレグループだぞ!と、言わんばかりに 長丁場で劇的な展開を見せ、盤をヒックリ返す前に聴いていたアルバムは 違うものだったっけ?と確認したくなる程です。

まじめに聴くとぐったりくるくらいの激しい展開をみせます。

そして、アルバムのラストを飾るB-3が予想通りの美しさで押してきます。

こういうアルバムはきっとB面ラストに名曲が来ているはずだ!と信じで 聴いていた私の期待を裏切ることなく、ピアノのイントロも奥ゆかしく、 そこだけで日曜午後の小春日和に南風吹く木漏れ日(??)という 世界です。

ピアノがイイです。ピアノとこのヴォーカルも相性抜群です。

少し間違えれば、そう80年代のあの『ニュー・ロマンティック』 (死語ですか・・・?)路線に転んでもおかしくないヴォーカルとも 言えますが、そこが70年という年代独特の空気で上等の『プログレ』に 仕上がっていると思う訳です。

ただ、プログレッシヴ・ロックといってもかなりハード・ロックの色合いの 濃いものですし、少し『ニュー・ロマンティック』っぽいヴォーカルと 言う事もあり、『プログレはちょっと…』と敬遠されかた方でも きっとお楽しみ頂ける一枚だと思います。バン!(太鼓判)

(2011.10.30)