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第315回 DELIRIUM "Dolce Acqua"

DELIRIUM - "Dolce Acqua"
1971 ITALY FONIT CETRA LPX11 (Progressive Rock)

RARE:★★★

Member :

Ivano Fossati(vo,flute,g), Marcello Reale(b,vo),
Peppino Di Santo(ds,vo), Ettore Vigo(key),
Mimmo Di Martino(g,vo)


Side (A)
1. Preludio: Paura
2. Movimento I: Egoismo
3. Movimento II: Dubbio
4. To Satchno, Bird And Other Unforgettable
Friends: Dolce


Side (B)
1. Sequenza I & II: Ipocrisia-Verita
2. Johnnie Sayre: Il Perdono
3. Favola O Storia Del Lago Di Kriss: Liberta
4. Dolce Acqua: Speranza



イタリアン・プログレッシヴ・ロックという世界は、つくづく独創的な 世界だと思います。サイケ系の方々あたりから言わせると「いいのは わかるけどどれ聴いても同じに聴こえる」らしく、まあそれは私なんかが 演歌を聴いたらどれも同じに聴こえるというのと同様に、結局、好きでは なければ、そんなものかも知れません。

このデリリウムもそんなイタリアン・プログレの一角を占めてはいますが、 特にこの1stは、捻りの効き方が他とは異なる感じで、プログレ・ ファンの以外の方にも一聴の価値ある一枚でもあると思います。

ざらつきの感じられるアコースティック・ギターに、フルート、 ドラマッティックなピアノに男気のヴォーカル、とまさしくイタリアン・ ヘヴィ・プログレッシヴの『真骨頂』が、これでもかとばかりに ふんだんに盛り込まれています。

この後に発表するアルバムももちろん素晴らしい内容ですが、『暑さ』 (というかむさ苦しさ?)の沸点の高さはこれが一番です。さすがに オリーブとブドウの国イタリア。太陽の暑さがハンパじゃありません。

冒頭にはゆるやかなフルートと、アコースティックの爪弾き、哀愁の メール・ヴォーカル・・とやや静かな出だしではありますが、やたら グッとくる歌メロが抜群で、かといってサビではきちんとドラムスが 暴れるところがフォークとは一線を画するところでしょうか。

ところが、A-2のハイテンポなナンバーで準備運動が終わると、衝撃の A-3は、タテノリのピアノと異常に張り切っているリズムセクション、 鯨を釣り上げた漁師のような勇気の歌声と、そこになぜだかフルートが ユニゾンで絡み付いてくる、というとてつもない展開をみせます。

座って聴いていたそこの貴方が思わず立ち上がってしまった姿が私には 見えるようです!!

そして哀愁エキスを湛えたストリングスが登場。

一気にクラシカルな世界がひろがり、もうあたり一面は大変なことに なってきます。そんなこんなで(どんなんだ)ジャジーな展開に意表を 突かれながらA面が終了するのですが、B面もまた佳曲連発です。

頂点はやっぱりB-3でしょう。

ギターの刻みを従えながら、威厳のあるヴォーカルが前進します。 非常に力強い歌声は、何者の邪魔をも許さず、イタリアン・ロック界 広しといえど、ここまで威厳のあるヴォーカルはそうはいないと思います。 とりあえず、カッコイイのです。

アルバム最後はやさしげなフルートに包まれたナンバー、そのタイトルも Speranza(希望)は、まさにドルチェアクア(甘い水?)!

ビートやジャズ、クラシカルな要素までも取り入れ、やや『何でもアリ』 感がなくはないものの、それでいてイタリアン・プログレの路線を キチンと守り、全体的なバランスが保たれているところは、聴くほどに ハマります。

ジャケのデザインにはピンと来ないのですが、内容は一級品です。


(2011.01.30)