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第303回 PENTANGLE "Solomon's Seal"

PENTANGLE - "Solomon's Seal"
1972 UK-REPRISE
(Folk)

RARE:★★★★

Member :

Bert Jansch(g,vo), Danny Thompson(b),
John Renbourn(g,vo), Terry Cox(ds), Jacqui McShee(vo)


Side (A)
1. Sally Free And Easy
2. The Cherry Tree Carol
3. The Snows
4. High Germany
5. People On The Highway


Side (B)
1. Willy O'Winsbury
2. No Love Is Sorrow
3. Jump Baby Jump
4. Lady Of Carlisle


再結成する前のオリジナルとしての彼らの6作目であり最終作です。

ブリティッシュ・フォーク・グループの中でもペンタングルの音楽性は 非常にオリジナリティ溢れるもので、単なるフォーク・ロックの範疇で 語るには申し訳ないような格式高いレベルだと思います。

その独特の作風ながら、決してワンパターンに陥ることなく、次々と 傑作を世に送り出してきたグループですが、本作品はそんな彼らの フィナーレを飾るにふさわしい作品と言っていいでしょう。

ソロモンの封印と題された、聴く前から期待に胸高まるタイトルと ジャケットですが、そこまで期待させておきながら、A-1の出だしが 凄いのです。まぁ一度聴いてもらえればどなたもびっくりする事と 思いますが、こんな勿体つけていないイントロには普通しないです。 それもA-1を。続くバート・ヤンシュの第一声で、何かをしていた手も すっかり止まってしまいます。

ペンタングルは紅一点の女性ヴォーカル、ジャッキー・マッシーの歌声の まろやかさがひとつの魅力になっていますが、本作では男性ヴォーカルが リードをとる曲でもバッキングでミステリアスな遠景を思わせる 素晴らしいコーラスも披露しています。 このアルバムは特にジャッキーがリードをとる曲が極端に良いので、 最初に手にしたばかりの頃は、いつものクセで、男性ヴォーカルの曲を 飛ばして聴たりしていましたが、いやいや実はそちらも奥の深い世界が 広がっているではないですか!

我ながら相変わらず失礼な聴き方をしているナ、と一度は反省するものの、 やはり、このアルバムはA-2が極上だと思います。

女性ヴォーカルの フォーク・ミュージックとしては5本の指に入ると言ってしまいたい位です。

ワインに例えると、バックの演奏にボルドーのしっかり感があるので、 ヴォーカル自身が本来持つボジョレーの軽快感が加わった事で、酸味は 少ないけれども、それでいてキレが悪いわけでもない、だったら最初から白ワインでしょ、というツッコミもありますが、和風でいえば、本当に 美味しいそばを、つゆを付けずに楽しめる、そんな深く優しい作品に 仕上がっているのです。(ますます解らなくなりましたか・・・。)

しかしながら、ジャッキーのヴォーカルは、まだまだ終わったわけでは ありません。A-2を既に5本の指に入れてしまったのに、B-1に来て 更なる極地が待っていたので慌てふためく、そんな展開でしょうか。

メンバーそれぞれの力量が凝縮されたこのアルバムには、富士の ご来光にも比肩しうる格調高さと感動がある、という事で、めでたい 年初の一枚とさせて頂きます。

(2010.01.10)