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第301回 ZARUTHUSTRA "Same"

ZARATHUSTRA - "Same"
1972 GER-METRONOME MLP15421
(Heavy Progressive Rock)

RARE:★★★★★★★

Member :

Ernst Herzner(vo), Wolfgang Reimer(g,vo,ds),
Michael Just(b,vo), Klaus Werner(key),
Wolfgang Behrmann(ds)


Side (A)
1. Eternal Light
2. Mr.Joker
3. Past Time


Side (B)
1. Nightmare
2. Sad Woman
3. Ormud


ジャーマン・ヘヴィ・プログレッシヴの隠れた傑作です。

「ツァラトゥストラ」というと、哲学者ニーチェの代表作で、ロック・ ファンにはイタリアのムゼオ・ルーセンバッハ(MUSEO ROSENBACH)の 同タイトルの名作が有名かと思います。

が、ここで紹介するグループは、アルバムタイトルだけでなく、大胆にも グループ名もそのまま『ツァラトゥストラ』を名乗り、更に本作1枚で 消えてしまった事で『幻のグループ』とまで言われています。

『ジャーマン・ヘヴィ・プログレ』と聞くと陰鬱でドロドロ、混沌とした 世界を思い浮かべる方が多いと思いますが、このグループはいい意味でも 悪い意味でも、そんなイメージを覆してブリティッシュ寄りの音に、 歌詞も英語で、他のドイツのグループに較べるとインターナショナルな 指向を感じさせます。

ジャケットもその名に相応しく、とても格調高い雰囲気を醸し出して いるのですが、でも!そんなジャケのデザインに対して、音の方はもっと ベタで、実はちょっとジャケットと内容がマッチしていないかな、と いうのが率直な感想です。

そしてその『ベタ』なサウンドはと言えば、非常に錆びた音色のオルガン、 ディストーションかかったギターと、ヘヴィーなコーラスが全編に亘って 活躍!

…と書いてしまうと、それは、要するに70年初期の主流を占めた ギターとオルガンによるハード・ロック・サウンドで、ありがちと言えば ありがちなとも言えて、所謂初期ユーライア・ヒープ系の音作りに、 しかもレベル的には超B級ですので、これ一枚で消えたのも、『幻』と なってしまったのも致し方なしなのかもしれません。

それでも随所にとんでもなく光輝く曲があり、特にA-1、A-2は素晴らしい です。A-1は本当にヒープっぽいですが、休日のランチにお酒を飲んで ちょっと回ってしまった食後に聴けば心地よい気だるさ倍増で、幸せな 時間をすごせます。ヴォーカルもゆるやかで良いです。

A-2はズバリ名曲。

曲構成が異常にカッコよく、ギターのバッキングの入り方もあまり他に 類を見ないもので、随所に聴かれるブレイクも完璧なタイミング。そして ヴォーカルはここでは勇気百倍。後半のサビでのヴォーカルとギターの 不思議なユニゾンはついつい歌ってしまうくらいカッコよく、B級ファンに とってはこれ以上ない宝物でしょう。

B級ロックにはB級ロックの味わいがあり、いかにもブリティッシュ然と しながらも、B級的良さがしっかりと味わえる作品であることは間違い ありません。

(2009.11.10)