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第285回 KAY McCARTHY "Stormy Lullaby"

KAY McCARTHY - "Stormy Lullaby"
1983 ITALY-RCA ML31697
(Folk Rock)

RARE:★★★★★★

Member :

Kay McCarthy(vo,irish harp),
Angelo Canichella(g,mandolin,banjo),
Mario Carlini(fiddle,mandolin,xylophone), Mario Filippi(violin), Piero Ricciardi(bodhan,bones), Luca Spagnoletti(flute),
Matteo Usuelli(g)


Side (A)
1. A Fhuiseog Bheag Rua
2. A Sword Of Steel
3. The Star Of The County Down
4. Cunla
5. Stormy Lullaby


Side (B)
1. The Three Ravens
2. An Cruiscin Lan
3. Down By The Salley Gardens
4. Siobhan Ni Dhuibhir
5. Greensleeves


ROISIN DUSH(アイルランド語、BLACK ROSEという意味です)という 隠れた名グループのヴォーカリストが、イタリアからリリースした ソロ・アルバムです。

突然ですがアイリッシュ・フィメール・フォークと聴くと何を 想像しますか?

これは全くの私見ではありますが、アイリッシュ・フォークと言えば、 フィドルなんかを使ったパブで聴く音楽、みたいなイメージで、大体の ものは、湿り気を好む日本人の耳には厳しく、スティーライ・スパン (STEELEYE SPAN)あたりを楽勝で聴けない方にはあまり向かないように 思います。

しかしながら、このケイ・マッカーシーのソロ・アルバムは彼女の歌声が 異常にウェットで、イタリア・リリースのせいかトラッドな曲も少なく、 我々日本人の琴線にもじゅうぶん響き渡るもので多くのフィメール・ フォーク・ファンを魅了する素晴らしい内容なのです!

特にしっとりとした曲のしっとりさは尋常ではなく、梅雨時に ドライブなんかしていて、信号待ちでに窓ガラスをつたって落ちる雨露を ぼんやりと眺めて物思いにふける(それでクラクション鳴らされる・・)、 そんな雰囲気のナンバーです、と言ったらお分かりいただけるでしょうか。

またジャケットですが、これも全くの私見ではありますが、表ジャケに こんな風に女性シンガーが映っているものに限って、ロクな内容のものが 無いっていう傾向があると思うのですが、これは例外です。 アイリッシュ・フィメール・シンガーというと他にはメアリー・ブラック (MARY BLACK)なんかも有名ですが、こちらの方がもっと柔らかく、 懐深い歌声、という感じです。

A-1からもう霧雨降りしきる中をゆったりと進んでいく蒸気機関車のような エギゾチックさで、トラッドな曲を多少は織り交ぜつつも、濡れ そぼるには十分です。

B-1も素晴らしい出来でそこからゆるやかにB-2へ移行し、そしてB-3への 流れは筆舌に尽くしがたいセピア色風景!もう完全に別世界への誘いです。

このレコードは巷で騒がれるよりも随分前に海外のディーラーから 「絶対内容イイって!値段も安いってー!!」と強引に薦められて 渋々(おい)買ったものなのですが、今となっては彼に感謝するとともに、 素直に「お薦め」を受け入れる事のできない心の狭さに、いささか 反省もしており、改善まで持っていきたいところではあるのですが・・・・。


(2008.06.30)